ルーム 感想

映画「ルーム」を観ました。
4月9日、横浜ブルク13にて。
字幕版。
原作未読。

7年前の誘拐事件の被害者と彼女が監禁されていた部屋で産んだ子のお話。

前半は母子が監禁されている部屋の中での生活。
いかにして生き長らえて、脱出の機会を狙っていたのか。

後半は脱出後の生活について。
(脱出できることは予告編の時点で示されていたはず)


前半、「ルーム」の中の生活

7年前の誘拐事件当時はまだ10代だったと思われますが、その状態でよくまあ立派に子育てできたものだと思います。

生活必需品は犯人が用意してくれるらしいものの、食事の準備は自分たちでする必要があったみたいだし、狭い部屋の中ではあっても体を動かして運動させていたり。

言葉を教えたのもすごい。
テレビ(カートゥーンとか)や絵本の類はあるものの、基本的には母と子しかいない環境で、5才児があそこまで流暢に英語を話せるのもすごい。

あのテレビは見られるチャンネルが制限されてたりするのかしら。


後半、脱出後の世界

マスコミについてはともかく。
あの追い詰め方はひどい。
あれは部外者だからこそ言える無神経さ、無頓着さの表れなのかもしれません。
むしろ、ぼく自身もまたああいう発言を無意識にしてしまっているかもしれません。
前半で「ルーム」の中での彼女たちの生活を見ているために、あのインタビュアーの発言に憤ることができるものの、あの状況を知らなければ「もっと良い手があったのではないか」などと言ってしまいかねません。
ちょうどつい先だっての事件に際して詳細が公表されていないにもかかわらずああだこうだと邪推する言説が蔓延っていたように。

もっと、ジャックくん(「ルーム」の中で生まれた子)が人間社会の常識がわからなくて苦労する展開を事前には想像していたのですが、意外にも、そこまで非常識に見えるような言動をすることはなかったように思います。
「ルーム」の中だけしか存在しない世界から、外に出て「ルーム」の外にも広大な世界が広がっていることを知ったわけですが、驚きこそすれ、次第に順応していってしまうので、適応力が高いといえばそれまでですが、もう少し拒絶反応みたいなものがあるのかと思ったのですが、良くも悪くもジャックくんは「良い子」なのでした。

少しばかり他人に対する警戒心が強い傾向はあるようにも見えますが、あの程度であれば、一般的な「人付き合いが苦手な人」の範疇のような気がします。

事件の当事者とは別に、当事者の家族についても描かれています。
監禁されていた間に両親は離婚し、父親は地元を離れて遠くで暮らし、母親は別の男性と一緒に暮らしていました。

実の父親の反応は冷淡というか、救出された娘や孫に目を合わせることができないという、彼は彼でつらい心情だったのかもしれません。

ばぁばは特に何かを言うわけでもなく、優しく見守る立場だったでしょうか。

ばぁばと同居している男性が、見た目はいかつくて怪しげな人に見えたものの、意外といっては失礼ですが、良い人でした。
ジャックくんに直接語りかけるでもなく、わざとらしさすら感じるような態度でジャックくんの警戒を解いていく手法はお見事でした。
後から振り返ると「魔女の宅急便」のグーチョキパン店のご主人みたいなイメージで思い出されます。

あの狭い「ルーム」から外に出ることはできたものの、世界にはやっぱり何か見えない壁のようなものがあって、結局は限られた閉じた世界(ルーム)の中でしか人は生きられないのかもしれません。

部屋 上・インサイド (講談社文庫)

部屋 上・インサイド (講談社文庫)

部屋 下・アウトサイド (講談社文庫)

部屋 下・アウトサイド (講談社文庫)