チヨダ・コーキによる「V.T.R.」という体裁。
「スロウハイツの神様」未読。
「ハケンアニメ!」における「運命戦線リデルライト」の王子千春監督の次回作の原作、とのこと。
殺人ライセンスのある世界の、ティーさんとアールさんのお話。
正直、かなりつらいです。
「ハケンアニメ!」は陽性の、善意のお話でしたが、こちらはもうなんとも陰気な、残酷な世界。
救いがないです。悲しい。
これが中高生から絶大な人気だと聞くと、世も末だなあと思ってしまいます。
女性に聖性を求める向きには、ちょいとばかり刺激が強すぎます。
このあたりの性的な刺激は、実はいわゆる「ライトノベル」では周到に排除されているように思います。(少なくとも、ぼくが読んでいる範囲では。あ、ガガガ文庫なんかはわりと過激なものもあるイメージ。)
派手な外観に反して、中身は意外と健全。いわゆるしょじょびっち。
少年まんが誌におけるエロコメみたいに、それが「ライトノベル」を安心して読める所以なのかもしれません。
本書を読みながら思い出したのは、宗田理さんの「ぼくら(の7日間戦争)」シリーズの、たしか2作目あたり。
うろ覚えではありますが、中学校の美人で有名な先輩が亡くなるお話だったと思いますけれども、「ぼくら」シリーズなんて実写映画にもなるくらい「健全」なイメージの作品でこれかよ、と。
あれも、実用性どころか萎える方向でした。
思ってもみない場面で不意にエロエロなりょうじょく系ドージンシとかに遭遇した気分とでも表現すればいいのかしら。
薬物ものやはらませものも嫌いではないというか、わりと好んで実用したりもするのですが、受けつけない場合も時たまあって。
実用性に向く作品と向かない作品ってありますよね。
自分の中でも、その区別をはっきりとは説明できない部分があって、もやもやします。
そんなわけで、この作者であるところのチヨダ・コーキさんは美人の女性に何か恨みでもあるのではないかと疑ってしまうレベルの救いのなさでした。
文体は、主人公ティーさんが読者に語りかけてくるような軽薄な感じ。
この文体だけ読むと、なんじゃこら、って投げ出したくもなりますが、この本に限ってはこの文体こそが必然なのかもしれません。
トリックというほどご大層なものではなくて、単に必要なことを説明していなかっただけ、という気もしますけれども。
それにしてもほんと救いがない。
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