日本SFコレクション NOVA1
大森望責任編集「書き下ろし日本SFコレクション NOVA1」(河出文庫)を読みました
オリジナルの新作SF作品を集めたアンソロジーです。
・小林泰三「忘却の侵略」
古典力学的世界観と量子力学的世界観との違いが、わかったようなわからないような。
ともあれ、望ましくない結果が予想される場合は観測しなければいい、というのは、なるほどと膝を打ってみたり。
あそこまで「嫌」を強調されてしまったら、回答なんて怖くて聞けませんね。
うーん、キーワードは「観測」?
・藤田雅矢「エンゼルフレンチ」
人格複製技術については、それだけで別の作品にできそうですが、それはそれとして。
たしか、山本弘さんの「アイの物語」の一編にもあったと思いますが、
人類の活動範囲を深宇宙まで拡大するには、機械の身体の獲得と、その機械の自己増殖能力があると便利なのでしょうね。
キーワードは……、「衛星」だとちょいと大き過ぎてずるいかしら……?
・山本弘「七歩跳んだ男」
月面基地で発生した観光客の変死は、初の月面殺人事件か?
ということで、宇宙開発には、個人レベルから国家レベルまで、様々な陰謀が渦巻いているのですな〜。
キーワードは、月といえば「ぼくの地球を守って」
……苦しい
・田中啓文「ガラスの地球を救え!」
ロウ・アゾータ大統領が某国の技術と財政の全てを注ぎ込んで構築した壮大なアミューズメントパークが、地球を救う!
わけですが、
政権交代で某殿堂の計画も頓挫してしまった今、もしも好戦的な異星人の攻撃目標になってしまったら、地球を守るのは絶望的ですね……。
警告を発しているのはテヅカさんなのに、実質的に地球を救ったのは、レイジさんなのですな〜。
キーワードは、……うーん、テヅカ作品の中にヒントがあったりしたら、ぼくにはわかりません
・田中哲弥「隣人」
扉裏の、『匂い立つような食卓描写』という表現が、ぴったりすぎるくたいにぴったりで、参りました。
なんでしょうか、この、文字の羅列からたちこめてくるような、におい。
キーワードは、「マイホーム」ですかね。
・牧野修「黎明コンビニ血祭り実話SP」
もしかしたら、元長柾木さんの「飛鳥井全死は間違えない」とかのシリーズで出てくるメタテキストの概念ってこういうことなのかも、とか思ったり。
壮絶。
キーワードは、「記述」?
・円城塔「Beaver Weaver」
立体的な次元の階層構造が、複雑ながらも、直感的になんとなくわかったような気分になれる、というのは、文章が上手だってことなのでしょう。
公理系を証明して確立することで世界が拡大する、みたいな?
『強引でもいい。
逞しく育って欲しい。』
キーワードは、「情報の自我」?
・飛浩隆「自生の夢」
そんなわけで、作中に引用されている映画「ミツバチのささやき」を、たまたま静岡で上映していたので、観賞して参りました。
アナさんかわいいよアナさん。
途中の記憶が飛んでしまっているのが残念ですが……。
ハニカム構造は美しいですな。
本編については、
〈ぼく〉とか〈わたし〉とかが一人称ではなくて三人称固有名詞だという注釈は、作品の主題として重要なのでしょうけれども、頭がこんがらがってややこしいです。
視点をどこに置けばいいのやら。
間接的な情報から本人を復元しようとする試みはおもしろいですね。
キーワードは、「フランケンシュタイン」でしょう。
・伊藤計劃「屍者の帝国」
フランケンシュタインの怪物が実用化された世界って、うーん、便利なものなのかしら?
発想は、近代の機械化社会と同様に、動力と労働力の確保ということなのでしょうか。
この先は、慢性的なフランケンさんの材料不足を解決することが課題になりそうですが……
キーワードは「労働者」ってことにしてふりだしに戻るというのはどうでしょう。
ということで、ガチガチのSFは、読むのに頭を使って、疲れます。
おもしろいのですが。
竹本泉さんの「よみきりもの」シリーズみたく、作品間を接続するキーワードを探してみようとしたのですが……かなり強引でした
精進します。