新・新本格もどき

霧舎巧「新・新本格もどき」、光文社文庫

他の作家さん(本人含む)による過去の作品を「もどく」お話。

もどき元は、
二階堂黎人さん、
森博嗣さん、
北村薫さん、
西澤保彦さん、
芦辺拓さん、
麻耶雄嵩さん、
霧舎巧さん。

前作「新本格もどき」未読。

部分的な記憶喪失の探偵さんと、過去の作品の登場人物に扮するヒロインさんが、事件に巻き込まれていきます。

以下、ネタバレ注意。















人狼病の恐怖

元ネタ未読。

人が狼になるビョーキのお話。

トリック云々はともかく、一人称が「ぼく」だから男性、という断定はちょっとあり得ないかと。

直後では「おら」とか「ですだ」とかの言葉づかいでは性別を判断できないって自分で言ってるし。

本書のむちゃくちゃ加減を推察できる一編。



・すべてがXになる

元ネタ既読。

謎の研究所に捕らわれた婚約者を連れ戻そうとするお話。

原作は胸くそ悪い印象しか残っていませんが、こちらはどちらかというとトンデモ系になるでしょうか。

表題の意味については、元ネタと同様に、おぉなるほど、と思わされました。



覆面作家は二人もいらない

元ネタ未読。

とある団地における事件のお話。

ノックスの十戒に挑んでいく感じ。



・万力教室!

元ネタ未読。

地球外生命体を探すお話。

シャコ万力の正しい使い方を初めて知りました。

前巻とのつながりがあるっぽい人物が出てきたりして、ちょっぴり困惑も。

通り魔さんとの結びつきがよくわかりませんでした。



・殺人史劇の13人

元ネタ未読。

とあるアパートを占拠した元劇団員さんたちのお話。

最後の晩餐。

本名と役名とが別々に表記されていて、誰が誰なのやら。

PCのワープロソフトの置換機能はこんな使い方もあるのか、と目を開かされましたが、ぼくが読んだ本では13章がひとつ14章がひとつとなっていて、作中で語られるトリックと齟齬が生じていました。

誤植なのかしら。



・夏と冬の迷走曲(どなた)

元ネタ既読。

翼ある闇、
痾、
鴉、
あいにくの雨で、
夏と冬の奏鳴曲、
木製の王子、
螢、
神様ゲーム
まほろ市の殺人:秋/闇雲A子と憂鬱刑事、
あたりでしょうか。

貴族探偵の「こうもり」も、というのはこじつけすぎかしら。

いちおう一通り既読、のはず。
記憶が朧気なものも多いですが。

わかる人にはわかればいい、というスタンスなのかもしれません。

作者さんの意図もよくわかりません。



・《おかずの扉》研究会

元ネタ未読。

隻眼の少女、追加。

全編にわたる解決編。

いろいろと解決していたような気がします。



そんなわけで、個別に各作品をもどきつつ、全体としてもひとつの大きなお話になっている、という構造なのでした。

とはいえ、後半はその大きなお話の縛りが強すぎてしまった感もありつつ。

元ネタありき、な部分もかなりあるようなので、麻耶雄嵩さんしか読んでいないような素人が手を出すには少しばかりハードルが高かったようです。

巻末解説で想定されている本書の読者層からすると、
1、霧舎巧さん初読み、
2、正篇未読、
3、いわゆる新本格ミステリでも麻耶雄嵩さんくらいしか読んでいない、
という自分は想定から外れていた模様。

新・新本格もどき (光文社文庫)

新・新本格もどき (光文社文庫)

※致命的な誤記があったため、上げ直し。