ラストエグザイル-銀翼のファム- 感想

映画「ラストエグザイル -銀翼のファム- Over The Wishes」を観ました。

テレビシリーズはちらっとだけ見た記憶。

テレビシリーズの総集編みたいな感じなのでしょうか。
始めのほうは見覚えがあるような気がします。

ダイジェストっぽく端折っている部分もありますが、かなり壮大な叙事詩なのではないかしら。

テレビシリーズ放送当時にはほとんど内容を理解できていなかったのですが、それもそのはずで、この作品は腰を据えてじっくりと読み解くべき要素が濃密に詰め込まれているみたいです。

主人公のファムさんがうざったいだけだと早合点してしまったのは早計でした。

移民(帰還民)のために土地を奪い奪われて、国々の思惑が複雑に絡み合った一大スペクタクルです。

(とは言っても、観後の印象としては、ファイナルファンタジー的なテレビゲームにありそうなお話、という感想でもあります。)

王国のお姫様姉妹による対立だったり、小国を併合しようとする連合国との対立だったり。
また、(主人公視点では敵対勢力のように見える)連合国側にしても、実務的な指揮官は武力行使も辞さない強硬派、頂点に立つ最高権力者(亡くなった先代を継いだ幼女)は穏健派、と内部分裂気味だったり。
そして、強硬派の指揮官と旧王国の姉姫様が手を結んで理想を実現しようと画策するところに、主人公が手を貸す妹姫様が立ちはだかる。
愛憎入り混じった、一筋縄ではいかない複雑な物語が織り成されています。

鍵を握るのは空に浮かぶ超絶兵器「エグザイル」。
ひとたび墜ちれば一国を丸々滅ぼすことができる、悪魔の破壊兵器です。
が、その驚異的な破壊力ゆえに、各地の武力衝突に対する抑止力ともなり得るという、まるでどこかで聞いたことのあるような世界情勢を模しているようでもあります。

よくある話といえばよくある話なのかもしれません。
けれども、やはり「平和を願う心」にもいろいろな段階があって、その視座によって見える世界は異なるし、解決すべき問題も、それを解決するための手段も、違ってくるのだろうということのようです。

「ただ戦わない」という選択だけではどうにもならないこともあります。
しかしそれでもなお、幼女帝の祈りのような平和への願いは、胸を打ちます。
それはもはや初期の頃の無知からくる無思慮な放言ではなく、己を知り、自国の力を知り、世界情勢を知った上で、それでもなお平和を希求する、希望の涙だったように思います。

『ラストエグザイル-銀翼のファム-』 Blu-ray No.01

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