三角関係の視点について
1.
バウムクーヘンエンドを自分なりに解釈すると、
- 出来杉さん(仮名)と源さん(仮名)とが、交際関係までは至らずともそれなりに親密な間柄で周囲にもお似合いだと認識されていた。
- にもかかわらず、源さん(仮名)が唐突に野比さん(仮名)との結婚を決意してしまう。
ということではないかと解釈しました。
出来杉さん(仮名)=源さん(仮名)=野比さん(仮名)
という三角関係が形成されているとみなせるかと思います。
この場合、男女の性別には依存しないと思われます。
- ♂♂♂
- ♂♂♀
- ♂♀♂
- ♂♀♀
- ♀♂♂
- ♀♂♀
- ♀♀♂
- ♀♀♀
いずれの順列でも成り立ちます。
2.
三角形ですので、3つの頂点のそれぞれに視点を置くことができ、それぞれの立場で、物語の楽しみ方が変化するのではないでしょうか。
2-1. 出来杉さんの(仮名)視点
親密な間柄だった相手を失ってしまう立場。
NTR ジャンルのうち、狭義ではNTRR と呼ばれる側でしょうか。
大切な相手が自分から離れていってしまうという、無力感とか喪失感とか後悔する気持ちのようなものを堪能できると思います。
源さん(仮名)に対する未練もあるでしょうし、野比さん(仮名)に対する憎悪を感じることもあるかもしれませんが、
身を引いて二人の新しい関係を祝福することで自己憐憫に浸ることもできるかもしれません。
2-2. 源さん(仮名)の視点
親密な間柄だった相手に心を残しながらも、新しい関係に引かれていく感じでしょうか。
自らの意思で出来杉さん(仮名)と野比さん(仮名)とを天秤にかけて選択する場合もあるでしょうけれども、
(仮名の由来の作品ではその意思決定に関する葛藤は読者側からはあまり見えないかもしれません)、
一部の限定的な分野においては、本人の意思に反して籠絡されてしまったり翻弄されてしまったりといった外的な強制力によって転向を強いられる場合も見受けられます。
快楽堕ちとか、たまりませんね。
出来杉さん(仮名)を裏切ってしまう後ろめたさや背徳感、罪悪感みたいなものに苦しむことができると思います。
一方で、野比さん(仮名)から欲望されることによる充足感とか承認欲求を満たされる快楽とかも同時に味わうことができるかもしれません。
心の揺らぎとか葛藤という意味では、三者の中でもドラマ性が強い立場ではないでしょうか。
2-3. 野比さん(仮名)の視点
出来杉さん(仮名)から源さん(仮名)を奪い取る立場。
出来杉さん(仮名)へ向いていた源さん(仮名)の気持ちを自分の側へ転向させるという、一種の略奪行為であり、源さん(仮名)に対する征服欲とか支配欲、独占欲みたいなものを満足することができます。
場合によっては万能感みたいなものに酔いしれることすら可能かもしれません。
出来杉さん(仮名)に対する優越感を覚えることもできましょう。
歪んだ自尊心のようなものを満たすという意味では、利己的で自己中心的で独善的な立場なのかもしれません。
略奪行為の動機として、
- 源さん(仮名)本人に対する所有欲の発露である場合と、
- 出来杉さん(仮名)に対するやっかみから生じる場合と、
が考えられると思いますが、後者の場合は、源さん(仮名)からすればとばっちりでしかないという哀しいお話に帰結してしまうこともありそうです。
3.
上記の三角関係は、個人に限定したものではなくて、
- 青鬼さん=赤鬼さん=村人
みたいな関係だったり、
- 人=人=財力
- 人=人=才能
- 人=人=役職
みたいな関係でもいいのではないかと思います。
本文を書くにあたり、ちゃんとした文献の下調べをしていないので、おそらく、先行してもっと優れた研究もあろうかと思いますが、
ざっくりとネット検索した程度では、ジラールの「欲望の三角形」という概念が該当しそうな感じでした。
軽く読みかじった程度の理解でしかありませんが、今回挙げた例に反映すると、
という見方のように読めました。
原著を読んだわけではないので、もしかしたら原著ではその外の場合の関係性についても言及されているのではないかと期待しているところです。
ネットで手近で読める範囲ではかなり限定的な関係性だけの言及であるように読めてしまったので、もう少し違った見方をできるのではないかと列挙したのが、上述した第2項です。
自己陶酔というか、自己満足のための産物ではあります。
4.
本文の着想にあたっては、冒頭に書いたバウムクーヘンエンドの件に加えて、
以前から拝読させていただいている、いずみのさんの論説に多大な影響を受けているつもりです。
(ぼくが勝手に一方的に師事させていただいているだけではあります。)
具体的に参考にしたのは、
http://togetter.com/li/716476
あたりだったと思います。
他にもあったと思いますが、メモ等を残す習慣が無いものでうろ覚えでして、申し訳ありません。
まとめ内で言及されている文献にあたったわけではないもので、不備も多々あろうかと思いますが、ご寛恕いただけますよう。