華胥の幽夢 感想

小野不由美「華胥の幽夢 十二国記講談社文庫

短編集。

・冬栄

前巻でちらっと触れられていた、タイキくんがレン国へおつかいに行くお話。
血なまぐさい出来事の裏ではこんな温かい時間もあったのだなあ、と不思議な気持ちです。
レン王の農夫の考え方というのも、温暖な国ならではなのでしょうけれども、気持ちのよいものです。

・乗月

ホウ王を弑した月渓さんにまつわる、罪の重さのお話。
慶国で保護された元ホウ国公主の祥瓊さんが絡んで、王の在り方と大逆の罪について考えさせられます。
ホウ王の人となりが違った面から浮かび上がってきて、これまた難しい問題を提起するかのようです。
王を倒さざるをえなかった人たちの苦悩と葛藤を描きながら、その中でも前に進もうとする姿勢が清々しいです。
キョウ王もちょい役ながら、存在感がありありです。

・書簡

景王陽子さんと、雁の大学生楽俊さんとの、手紙というか書簡というか、伝書鳩のような伝言鳥のお話。

陽子さん楽俊さんそれぞれの現状がよくわかります。
お互いにちょっぴり背伸びしていて、それがわかっているような関係というのが、なんだか温かいです。

・華胥

才国の秘宝、華胥華朶をめぐる、殺人事件のお話。
果たして、犯人は誰なのか?、そして動機は?

国を統べるというお仕事のたいへんさがよくわかります。
「理想の国」のありようは、人によって異なる、というのが肝でしょうか。

・帰山

奏国の利広さんが、諸国を見聞して回った報告会みたいな。
これまでに個別に語られてきた各国の情勢が、一括されています。
感慨深いものです。
景王の評判もよろしいようで、なによりでした。

華胥の幽夢 十二国記 (新潮文庫)

華胥の幽夢 十二国記 (新潮文庫)