メルカトルかく語りき

麻耶雄嵩「メルカトルかく語りき」(講談社ノベルス)を読みました

銘探偵メルカトル鮎さんと、ワトソン役の推理小説家美袋三条さんとの掛け合いが冴え渡る5編の短編集です。


「死人を起こす」

高3の夏に仲良し6人組がカレー荘へ泊まりがけで出掛けた際に事件が発生。
その一年後、銘探偵メルカトル鮎さんに事件の解決を依頼したものの……。

高校生最後の夏という甘じょっぱさを織り交ぜつつ、オチがひどい。


「九州旅行」

このタイトルがまず、ひどい。
ともかく、死体を脇にしての、メルさんと美袋さんの掛け合いが楽しくて仕方がない、1編。
よく無事だったな、と。


「収束」

倒叙法というのでしょうか、結末があらかじめわかっている展開ながら、このオチは、やっぱりひどい。
アストロ博士とヴァレスカ助手の元ネタについては、浅学にしてわかりませんでした。
あと、カテジナ書というのも、某カテジナ・ルースさんのことが真っ先に浮かんでいけません。


「答えのない絵本」

メフィスト学園で物理教師が殺害されて、容疑者は生徒20人、みたいな。
む〜、ちゃんと読めば答えがわかるのかしら……。
でないと、あまりにもひどい。


「密室荘」

密室四の四という所在地にあるメルさんの別荘「密室荘」において、
地下室で死体が発見されたものの、
密室荘は密室状態で、
中に居たのは銘探偵メルカトル鮎さんと推理小説家美袋三条さんの2人だけ……。
前の4編との関連にニヤリとしつつも、このオチは、やっぱりひどい。




そんなこんなで、いろんな意味でひどい(褒め言葉)お話が5編も。
大満足です。

用意された謎を真剣に解こうとする人にはおすすめしにくいですが、
ライトな感覚でちょっと毛色の変わった推理ものを読んでみてもいいかな、という向きにはたいへんおすすめな1冊です。