隻眼の少女 感想

麻耶雄嵩「隻眼の少女」、文春文庫

2011年に第64回日本推理作家協会賞と第11回本格ミステリ大賞をダブル受賞した作品の文庫版。

「隻眼の探偵」御陵みかげさんの活躍を描くお話です。

1985年と2003年の二部構成。
世代を跨いだお話が展開されます。

「スガル様」をまつる小さな村を舞台に、凄惨な首切り連続殺人事件が繰り広げられます。
名探偵だった母の名を継ぐために、果たして御陵みかげさんは犯人を捕まえることができるのか。
どきどきはらはらな心理戦です。

軸となるのは、村に伝わる「スガル縁起」。神の力を受け継ぐ母親の血筋と、人の力を受け継ぐ父親の血筋とが、せめぎあいます。

この、血筋のしがらみには、探偵である御陵みかげさんも、語り部である種田静馬さんも、しばられています。むしろ、その血筋のしがらみとどう向き合うかにこそ、主題があるのかもしれません。

そんなこんなはともかく、隻眼の探偵御陵みかげさんが、なんとも魅力的なのです。水干をまとって、自信ありげに推理を披露する姿は、びりびりきます。
それだけに、結末はなんとも複雑な気分にさせられます。

論理の整合性の前には、読者の感傷など役に立たないのかもしれません。

隻眼の少女 (文春文庫)

隻眼の少女 (文春文庫)