やはり俺の青春ラブコメはまちがっている6巻 感想
渡航「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」6巻、ガガガ文庫
高校生の文化祭のお話。
アニメ既見。
今回は「星の王子さま」。
クラスの出し物の演目としてだけでなく、後半のトラブルにも絡んできて、毎度ながら巧みさにうならされます。
奉仕部の活動として比企谷八幡さんがとった手段は、泣いた赤鬼メソッドでしょうか。葉山さんがいてくれてよかった。
そして、主人公の独白。
「全てが変わっても/僕は変わらない」と歌う、the pillowsの「Fool on the planet」を思い出したりしました。
それにしても、女子の人のカーストというのは複雑ですね。絶対的に頂点に立っていられるならまだしも、他者と比較して相対的に立ち位置を読んで振る舞うとか、並大抵のコミュ力では耐えられそうにありません。
一方で男子は社畜の道を選べばとりあえずの居場所は確保できるものです。そうでないと、手持ちぶさたになってどうしたらわからなくてわたわたしたりします。
やれやれです。
作中、文化祭実行委員の仕事の分担について、もめる箇所があります。
みんなで力を合わせることが素晴らしくて、一人で背負い込むのは悪いことなのか。
他人に仕事を任せられないというのは、やはり社会的にはスキル不足ということになりそうです。自戒を込めて。
そんな小難しい話はさておき、今回も平塚先生は素敵です。ベース弾くし。
何より「誰かを助けることは、君自身が傷ついていい理由にはならないよ」というお説教が、ぐっときます。ゆきのんさんガハマさんはもとより、平塚先生やはるのんお姉さんといった理解者がいてくれるというのは、ありがたいことだなあと思います。
中途半端な馴れ合い、欺瞞や迎合を是とせずに、真剣に冷静に人間関係と向き合っているからこそ、空虚でない真の意味での相互理解へと近付いていけているのかしら、などと思います。
それはうらやましいほどの純粋さ、潔癖さの賜物でありましょう。卑屈で最低で陰湿な手段とはいえ、結果的に(自分以外の)「誰も傷つかない世界」を作り上げる手腕。
衛宮切嗣さんが目指したものと実質的には同じ目線なのかもしれません。なんだかんだで、男子はヒーローに憧れます。超然たるヒーローよりもむしろ等身大のヒーローに。
比企谷八幡さんは自覚は無いようですが、人を助けるために自分が傷つくヒーローです。
そんなあたりにも、この作品が願望充足器として機能している面があるのではないかしら、と思ったのでした。
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