ソング・オブ・ザ・シー 感想

映画「ソング・オブ・ザ・シー」を観ました。
8月27日、恵比寿ガーデンシネマにて。
字幕版。

アイルランドのアニメーション。

精霊とか人魚とかフクロウといったアイルランドの伝承的な要素が詰め込まれているらしく、そういう知識があればより深く楽しむことができるのでしょうけれども、知らなくても知らないなりに十分おもしろく見ることができたと思います。

主人公は幼い兄妹なのですが、妹さんがとてもかわいらしくて。

妹さんはとある事情で言葉をうまく発せないのですが、それでも表情や態度でしっかりと意思表示しているように見えます。
むくれてジト目になった顔とかすごくかわいい。
前髪を真ん中から左右に分けていて、髪が垂れるたびに耳にかけ直す仕草もかわいい。

上半身が赤、下半身がオレンジがかったピンクみたいな色合いの服装はアルプスの少女ハイジみたいにも見えたような気がします。

お兄ちゃんは、とある事情もあって、妹さんを邪険に扱ってしまったりもしていましたが、根は優しくて勇敢で、妹さんを助けるために大冒険することになります。
子供らしくてわがままな面もありますが、いいお兄ちゃんです。

絵柄については、キャラクターはカートゥーン風のシンプルな塗りですが、背景美術が特徴的です。
切り絵風というか版画風というか、背景の図像をいくつかに分割してモザイク状になっている感じというか。
パンフレットの監督インタビューによると北斎に影響を受けたとのことで、線描を多用した紋様になっていて、ペイズリー柄みたいにも見える気がします。

ジブリ作品からも影響を受けているそうで、基本的には思想的な部分というか、ジブリが日本的な要素を大切にしているように、アイルランド的な要素を詰め込むような作品にしているとのことですが、映像面でも影響を受けていそうです。

フクロウの魔女マカ様は湯婆婆を思い出しましたし、犬が飛ぶように駆け抜ける様子は猫バスを思い出しました。

記憶を司る精霊の爺様の場面の、ヒゲが四方八方に伸び散らかっている様子や、そのヒゲが光って光ファイバーみたいに情報を伝達しているっぽい描写とか、ファンタジー風の舞台世界の中で妙にSF っぽいものが馴染むように溶け込んでいるのもおもしろいです。

魔女マカ様の感情を吸い取って閉じ込めておく瓶は何かの暗喩なのかしら。
ある種の薬物的なものなのかとも思ったのですが、ちょっと飲み込めていないかもしれません。

兄妹ものではありますが、下の子が生まれたことで上の子がどう接したらいいのかわからなくて戸惑っているような微妙な距離感が、なんかいいなあと思いました。