二重生活 感想

映画「二重生活」を観ました。
7月9日、MOVIX清水にて。
原作未読。

哲学科の博士前期課程な院生さんが卒論の題材として「理由のない尾行」をするお話。

他人の私生活を覗き見るおもしろさがある一方で、あなたが他人を見ているとき他人もまたあなたを見ているのだ的な教訓にもなってるのかも。

長谷川博己さんを尾行する門脇麦さんが主人公なわけですが、そんな門脇麦さんを観客が見ているという階層的な構造になっているとも言えるかも。

ゴミ捨て場に取り付けられた監視カメラの映像がときおり挿入されるのも示唆的なのかもしれません。

欲を言えば「お天道様が見てる」みたいな言動をする人物が登場してもよかったのかしら、などと思いつつも、本編もけっこう長い分量だったので余計な物を加えても冗長になるだけかもしれず。

セトウツミに続けて菅田将暉さん二本目でしたが、期待したほど目立った活躍は見られなかったというか。

おそらく彼も彼女を尾行したのではないかと思うのですが、ほのめかし程度で、ハッキリばばーんと明示されたわけではなかったような気がします。

尾行する側とされる側の入れ子構造が逆転するのではないかという予想もしていましたが、うやむやになってしまったような。

どちらかというと長谷川博己さん側が強すぎたとも言えますが。

そういえばあのホテルで下着姿で独白する場面は、ちょうど胸元がチラチラと気になるような絶妙な画面配置もあってか、妙に艶めかしく見えました。

アダルトなビデオ的な動画的な物で冒頭にインタビューみたいな自己紹介みたいなのが入っているものが世の中にはあるらしいですが、あんな感じなのかしら、とか思ったりなんかしたりして。
(ぼく自身は残念ながらインタビューが入っていてもじれったくなって早送りしちゃうのでインタビュー部分の実際がどういうものなのかちゃんとは知らないのですが)

フィールドワークの観察者問題とでもいうのでしょうか、観察対象に対してそれを観察する人が影響を及ぼしてしまうという問題があるらしい、と聞いたことがある気がします。

本作の場合は、観察する側と観察される側とは、少なくともはじめのうちは接触していなかったはずです。

長谷川博己さんの家庭があんなことになってしまった経緯において、門脇麦さんが長谷川博己さんを尾行したという事象ははたしてどの程度影響していたのか。

彼女が尾行したから事態が悪化してしまったのであって彼女が尾行さえしなければ悪化することなく回り続けていたのか。
それとも、彼女が尾行していなくてもいずれは破綻していたのか。

その影響ははかりようがないのかもしれません。

ドラえもんが来なくてのび太さんとジャイ子さんが結婚した世界線では大長編のような危機をどう回避したのか、みたいな仮定の問題に通じるような気がしましたが、あまり関係ないかもしれません。

文系の人は卒論を自宅で書くというのも発見でした。

人付き合いの範囲が狭かったので他の学部や学科、もっと言えば同じ学科でも別の研究室の人ですら、どんなことをやってたのかあんまり知らないのでした。
ちょっともったいなかったかもしれません。

結局のところ、ぼくは学問というものをわかっていなかったのかもしれません。