百日紅 2回目感想
映画「百日紅〜Miss HOKUSAI〜」、2回目観ました。
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1回目の感想↓
百日紅 感想 - 思い出の小箱の隅
原作まんがを読んでから観ると、また印象が違うように思います。
前回は少しネガティブな感想を書いてしまいましたけど、改めて見ると、そう悪いばかりじゃないぞ、みたいな。
原作の継ぎ接ぎではあるものの、1本の映画としての体裁をきちんと整えてあるように感じました。
今回とくに感じたのは、アニメーションとしての表現の豊かさでした。
ふとした動作、ちょっとしたしぐさ、何気ない挙動の、動きの滑らかさ、自然さが、まさしくアニメーションの醍醐味という感じで心地よいです。
- お猶さんを膝に抱えたお栄さんが、ゆらゆらと揺りかごのように体を揺らす、その優しさ。
- 雪で遊ぶお猶さん、川下りの舟から手を伸ばして水面に触れる指先。
- 蚊帳の中で動き回る首を目で追う北斎さんお栄さんと、見えない善さんとの視線や首の動きの違い。
- 橋を渡る人々の、いかにも商売している感じの生活感。
- 蚊帳の上に佇むカマキリの、落ち着いた足運び。
- 足を机に乗せて寝そべる善さんとお犬さまとの動きの同期。
- 紙に描かれた善さんがくしゃっとつぶれるところ。
- 大きいところでは、クライマックスでお栄さんが駆け出す場面の背景動画。
お栄さんを後ろから追いかけていたカメラが、ぐいーっと前に回り込んでいく一連の動きが、(にわか仕込みの知識しかないものの)、なんかすごいです。
とはいえ、やはり不満もあって、前回書かなかった(書けなかった/気づいていなかった)点としては、着物がきれいすぎることかもしれません。
実写の時代劇でも、こだわっている作品ではそれなりに着古した感を出していたりしますけれども、たまに、さほど裕福でもなさそうな町人たちがみんな下ろしたてみたいな小綺麗な格好をしていて違和感を覚えることがあって、本作もそんな感じ。
派手というわけではないと思いますが、小ざっぱりしていて、「掃除とか家事全般をほとんどやらない」というイメージとは齟齬があるように見えました。
かといって、あまりにもびんぼくさい姿を見たいかというと、必ずしもそういうわけではないのですが。
実際、花魁の人の着物の細緻な紋様とかはものすごく細かく描き込まれていたので、(CGかもしれませんけれども)、そういう高級な部分と、お栄さんたち庶民感覚との差異化は十分になされていましたけれども。
色の塗り具合が、コントラストが強いと表現すればいいのか、濃淡がくっきりしすぎているような、べったりと単調な感じがするのではないかと思います。
空の色も、もちろん、季節によってはあのくらい鮮やかな青一色の場合もあると思いますけど、もう少し霞んだような淡い色の日があってもよかったのではないかしら、とか。
(もしかしたら、現代の少し霞みがかった青空は化学物質的なスモッグやらなんちゃらの影響であって、産業革命以前はあのくらい鮮やかだったのかもしれませんけれども。)
昨今のテレビアニメでは面の彩色にもグラデーションがかかっていたりするような感覚があるせいか、単色ベタ塗りが、新鮮ではあるものの、違和感でもあるような気がします。
このあたりは個人の好みとか慣れの問題かもしれません。
1回目は読んでもいない原作を勝手に意識してしまい、「映画ではこうなっているけど原作はどうなのだろう」みたいな見方をしてしまっていましたが、
原作を読み終えた今回は逆に、原作から独立した映画作品単体としても見ることができたように思います。
良い映画です。
声について、お栄さんのぶっきらぼうな感じもいいのですが、善さんのちゃらんぽらんした感じも、いいなあと思いました。
1回目の感想→百日紅 感想 - 思い出の小箱の隅
原作の感想→百日紅 上、下巻 感想(映画のネタバレあり) - 思い出の小箱の隅