百日紅 上、下巻 感想(映画のネタバレあり)

杉浦日向子百日紅」上、下巻、ちくま文庫

下巻には、実業之日本社版の単行本には収録されていなかったお話が2話、追加されているみたいです。
筑摩書房版『杉浦日向子全集』には収録済み。



葛飾北斎さんとその娘・お栄さんを中心に、お江戸の日常+ちょっとした怪異を織り交ぜたお話、みたいです。

北斎さんもお栄さんもさばさばしているのでわりかしコミカルではありますが、案外、人の仄暗い情念みたいな部分も色濃く描写されているみたいです。

映画版には(おそらく1場面しか)登場しなかった、北斎さんのお弟子さん(女性)とか、けっこう強烈な存在感を放っています。

序盤の公衆浴場の場面が明示的ですが、ほとんど小娘同然のお栄さんと対極の、大人の色香がむんむんです。

(余談ですが、『乙嫁語り』7巻の2人を思い出したりしました。)

お江戸の女性像というとついつい、大奥とか吉原的な廓の中を想像してしまうのですが、フツーの一般庶民もまた日々の生活を営み、色恋に悩んでいたのだと気づかされました。

上映中の映画『駆込み女と駆出し男』はまた極端な例っぽいな〜とか思いつつ、そのうち見るつもりではいます。


以下、記憶に残っている範囲で、映画版と原作とを比較してみます。

※映画のネタバレ絶大です。

なお、映画のオフィシャルガイドブックも発売中のようですが、現段階では参照しておりませんので、あくまでも私的な集計である旨、ご承知ください。














【上巻】

  • 其の三、恋
    • お栄さんが肩をはだけて化粧する場面は、映画でも少し違う形で採用。
    • 善さんの絵やお栄さんの絵に対する批評、映画ではお栄さんがいない場面で北斎さんと善さんとの会話でしたかしら。
    • 初五郎さんとお政さんとの遭遇。
  • 其の四、木瓜
    • 国直さんとお栄さんとの遭遇、少しばかり順序の入れ替え。
    • お栄さんとお母さまとの対話。
  • 其の五、龍
    • 上記、国直さんとの邂逅を再編成して組み込まれている以外は概ね原作準拠。
  • 其の七、鉄蔵
  • 其の九、鬼
    • 概ね原作準拠。
  • 其の十四、波の女
    • 神奈川沖浪裏。(原作のコレがソレであるかはわかりませんが)

【下巻】

  • 其の十六、火焔
    • 映画ではお栄さんがただの野次馬だったように見えた気がします。
  • 其の十七、女罰
    • 舟で川下り
  • 其の十八、酔
    • 映画では滝山さんの噂を聞きつけて見に行こうとする描写だけ。
  • 其の十九、色情
    • 概ね原作準拠。蔭間で会話するのは吉弥さんだけ。
  • 其の二十、離魂病
    • 概ね原作準拠ながら、映画ではお栄さんと善さんも参戦。
  • 其の二十八、野分
    • 映画では妹さん(お猶さん)のお話を膨らませている印象。
  • 其の三十、山童
    • お猶さんのお話として再構築。

扱い方の多寡はあるものの、14/30 と半数近くのエピソードを拾っている勘定になるわけで、90分という短い上映時間によくまあ詰め込んだものです。

映像化にあたっては、映画2回目の感想に書いたとおり、アニメーションとしての動きが、素晴らしいです。

同時に、映画化したことによって、この素晴らしい原作に触れる機会を得たことに、感謝しきりです。
圧倒的☆感謝。

映画1回目感想→百日紅 感想 - 思い出の小箱の隅
映画2回目感想→百日紅 2回目感想 - 思い出の小箱の隅

百日紅 (上) (ちくま文庫)

百日紅 (上) (ちくま文庫)

百日紅 (下) (ちくま文庫)

百日紅 (下) (ちくま文庫)