小さいおうち 感想

中島京子「小さいおうち」、文春文庫

女中さんのお話。

ソーシャルゲームに時子様*1というアイドルさんが登場してらっしゃいまして、本作の時子奥様とは方向性が違うと思いますがなんとなく思い浮かべたりしてました。

それはともかく。

個人的に、2013年は戦争ものに触れる機会が多かったように思います。
とくに印象的なのは、戦争そのものよりも、その前後の雰囲気を描こうとしていたもの。
風立ちぬ」しかり、「寫眞館」しかり。
戦前の活気溢れる気運を描くことは、あるいは、戦争へと向かいかねない時流への警鐘なのかもしれません。

それもともかく。

魔性の奥様に振り回されるお話かと思いきや、思いのほか密やかに秘めやかにこっそりと潜航して、その結末もわりかしあっさり風味ですかしら。

エピローグで視点が変わって、お話が立体化した気がします。

寡聞なもので、絵本のちいさいおうちを存じ上げないし、戦後のまんが家史にも明るくないのですが、紙芝居というのは表紙みたいな感じということなのかしら。
この部分は実写でどう映像化されるのか楽しみです。

映画といえば、予告編で、えっ?そこを使うの?、みたいな切り取られ方をしていましたが、読み終えてみればいちばん心を揺さぶられた箇所だったかもしれません。

人の心というのはままならないものです。

小さいおうち

小さいおうち

*1:財前時子様