まんが
新堂エル「TSF物語」、ZUKI樹「犬の生活」(ともにティーアイネット)を読みました
基本設定としては、どちらも、冒頭で主人公青年が改造手術を受けてしまうという、一種の変身譚です。
「TSF物語」は、タイトルのとおり、TS(トランスセクシャル、性転換)です。
思春期の男子というものは、少なからず、女性になってみたいと考えたことがあるのではないかと思います。
そんな夢と欲望が詰まった一冊です。
女性ならではの苦労とか大変な面はあまり描かれず、ひたすらに男性側に都合のいい描写ばかりではありますが、そういった実用面でもばっちこい。
流行語にもなっているあへ顔だぶるぴーすとかいうのも登場します。
そんなわけで、男子青年が、女性の肉体を手に入れて、幸せを獲得していく様をまざまざと読むことができます。
結末もなんとなくハッピーなような気がするので、読後感も上々です。
一方、「犬の生活」は、タイトルのとおり、犬になってしまうお話。
主人公の男子青年くんの脳みそが、幼馴染みの女子の人の飼い犬に移植されてしまうというものです。
実写だとかなり抵抗が大きそうな分野ではありますが、まんがだとするすると読めてしまうから不思議。
野性的な展開が、なんだか迫力あります。
犬になった男子くん視点と、相手となる女性視点と、双方から描かれることで、場の盛り上がりが強調されるのかしら。
残念なのは、「犬の生活」シリーズは3話だけ、全体の半分程度で、残り半分はわりかしフツーなお話で埋められています。
実用的にはどちらがどうかはお好みによるでしょうけども。
というわけで、えろさえあれば何でもアリ、なえろまんが作品でも、わりかし珍しい変身譚の傑作2作、少し前の作品ではありますが、ようやく読むことができました。
こういうものを読むとき、読んでる最中は没頭しているのでそれどころではないですが、
賢者タイムに至ると、自分がどこに感情移入していたのか、など分析してみたりすることがあります。
今回の2作はとくに、一般的な男女関係とは異なる部分もある中で、
やはり女性側の視点に激しく心を揺さぶられる傾向があるように感じます。
現実とはかけ離れていると頭では理解しつつも、こういったファンタジーに依存していると、どうにも現実は難儀な世界に思えたりするのでした。
ところで、「TSF物語」の装丁から、なぜか「FSS」を連想してしまうのは困ったものです。