電脳コイル 6

宮村優子電脳コイル6」(徳間書店)を読みました

TVアニメ版の再放送も感動の最終話を迎えて、心にぽっかり穴が開いたような、日常の色が褪せたかのような今日この頃ですが、
こちらの小説版は、アニメ本編の第10話「カンナの手紙」あたりと、まだまだ中盤といったところのようです。


大筋ではアニメ本編に沿いながらも、所々では独自の展開が進行しているこの小説版ですが、
前巻で発生した、夏祭りでの火事をきっかけに、大人たちによるメガネへの監視が強化されます。

手を結んだ〈コイル電脳探偵局〉と〈大黒黒客クラブ〉のメンバーは、大人への不信をますます募らせ、
過去に大黒市で起きた事件の秘密へ迫ろうとします。

そんな彼らに、メガマス社が接触してきますが…。


一方、子どもたち〈メガネつかい〉の間では、イサコ様こと天沢勇子の噂が広まっていたり、隣り町の観音小学校との対立の緊張が高まったりと、イサコ様周辺も予断を許さない状況です。


そして、カンナのお父さんから〈カンナのメガネ〉を託されたハラケンは、単独、暗号の解読に取り組みます。


8年前、タマコおばちゃんたち四人にメガネを渡した〈部長さん〉で、メガマス社でメガネ開発の根幹に携わっていたと思われる〈おじさん〉…あの人の父親?やら、
イサコ様の主治医と思われる〈シウ先生〉やら、
天沢勇子を救世主のように慕う少女たちやら、
新しい登場人物がまた増えました。

3人目のユウコ通信によると、これでようやく登場人物が出揃ったとのことですが…



この小説版の特徴は、その独特の心理描写にあるように思います。

『〈メガネ〉に精通したするほど洞察力にも長けてくる』、という描写が作中で出てきますが、
どこか斜に構えたような、屈折気味な態度をとりながらも、仲間に対してはごくシンプルに、ストレートに接する、
甘やかすでも突き放すでもなくて、対等で率直な、ほんとうのことば。

自分の隠し事のために仲間が傷ついてしまう、さらにそのせいで仲間が自分から離れていってしまうのではないかと不安がるヤサコに対する、
フミエちゃんやダイチたち黒客メンバーの、容赦のないやさしさ。

こういった描写は、アニメ版本編とは別物ではありますが、心地よく感じます。