とある飛空士への追憶

犬村小六とある飛空士への追憶」(ガガガ文庫)を読みました。
…だいぶ前に。

某SomethingOrangeさんで紹介されていた一冊です。

影響されすぎですね


ネタバレ注意



舞台は、専制君主の支配する世界。

海を隔てて西側の神聖レヴァーム皇国と、東側の帝政天ツ上とは、長期の戦争状態にあります。

天ツ上側に飛び地として孤立しているレヴァーム皇国領は、陥落寸前の危機に瀕していました。

皇国領のお姫様で皇太子妃(予定)のファナを、なんとか本国へ送り届けるため、飛空士のシャルルが、単独飛行で敵中突破するという極秘任務にあたることになります。

ファナとシャルルの、数日間の飛空機の旅のお話です。


飛空機同士の緊迫した戦闘場面なんかもありますが、
中心となるのは、ファナとシャルルとの、なんとも言葉にならない、心の交流です。

…ありがちといえばありがちな、身分の違いのお話に過ぎないわけですが、
特筆すべきは、終盤、クライマックスの場面です。


キラキラとした輝きが行間から溢れ出してくるような、清々しい、爽やかな、決別。


本書の表紙もこの場面だと思われますが、ここに関しては、ただ一枚の絵だけではなくて、動く映像として観たくなるような、あるいは、映像化された動画が目に浮かぶかのような、強く印象に残る場面です。


ここへ至るまでに費やされてきた二人の時間の積み重ねが集約されて、
実は結ばなかったけれども、真剣だからこそ得られる確かな何かが、そこには残っているように感じます。