漫画をめくる冒険 読み方から見え方まで〔上巻・視点〕
泉信行「漫画をめくる冒険 読み方から見え方まで〔上巻・視点〕」(ピアノ・ファイア・パブリッシング)を読みました♪
ネットのマンガ読み界隈で話題の、漫画論の同人誌です。
著者は、「いずみの」「イズミノウユキ」などの名義で、ウェブでも漫画論を公開していたり、「ユリイカ」等にも寄稿してたりする方です。
本書の導入部でも、
『ユリイカ2007年11月臨時増刊号 特集*荒木飛呂彦』所収の
「ヘブン・ノウズ・ハウ・ザット・ビジョン・イズ<ねじれる視線>と<神の視点>の可能性」
で展開されている、視線と視点のお話しが述べられます。
(視線と視点の議論に関しては、「ユリイカ」の記事の方が詳しいです。
また、「ユリイカ」の
『特集*漫画批評の最前線』や『特集*安彦良和』
にも掲載されているようですが、ぼくは未読です。)
で、前置きが長くなりましたが、
本書ではまず、「漫画」が主に書籍という形態をとり、ページを「めくる」ことで展開されるメディアだということに着目します。
読者の視線がどのように動いて、その結果どのような効果が生じるのか、といったことが論じられます。
習慣として身に着いていた、漫画の読み方のルールを見直すことができます。
そして、本題は、「視点」と「主観」について。
漫画のコマに描かれている映像は、誰の視点からみたものか?、
読者の視点はどこにあるのか?、
台詞や独白は誰のものか?、
といったことに注目した漫画の読み方を、具体例を提示して解説します。
参照するのは主に、
小林尽「School Rumble」、
津田雅美「eensy-weensyモンスター」、
曽田正人「昴」、
です。
他にも手塚治虫、浦沢直樹などなど、いろんな作品も参照されます。
中心となるのは、キャラクター間の意思疎通のズレ、ディスコミュニケーションを、漫画としてどのように表現しているのか、という感じです。
本書で提示される「スクールランブル」の読み方は、とても刺激的です。
そして、個人的に嬉しいのが、「ewモンスター」。
ぼくは、この作品が妙にツボにハマっていて、でも、それを言葉にできていなかったのですが、
「ewモンスター」のテーマと、表現の手法との見事な合致が功を奏しているとのことで、すっと腑に落ちました。
漫画の読み方を意識することで、より漫画に近付くことができるのかもしれません。