澁澤龍彦生誕80年回顧展 ここちよいサロン

県立神奈川近代文学館澁澤龍彦生誕80年回顧展 ここちよいサロン」へ行ってきました♪

主催者の開催宣言や、編集委員高橋睦郎氏のプロローグの言葉が、本展の主旨をよく表しています。

古今の書物と読者との仲立ちであり、同時代の表現者たちの交流の場でもあり、今なお新しい視座を示してくれるような、客間の主人としての、澁澤龍彦像が浮かび上がります。


展示は、四つの部門で構成されています。

【第I部 客間の主人の少年時代】
澁澤家ね系譜や、原点となる愛読書などから始まり、フランス文学との邂逅、コクトーやサドに関する文筆活動が展開されていく様子を見ることができます。

【第II部 魔的なものたちの来訪】
サド裁判周辺の出来事と、その後の「黒魔術の手帖」「夢の宇宙誌」といった、いわゆる《異端》な題材に関する展示。

【第III部 澁澤サロンの客人】
澁澤龍彦と交流のあった、作家、画家、詩人、人形作家、舞踏家などなど、幅広い人たちとの、親密さを伺うことができます。

【第IV部 時空の彼方へ】
海外旅行と、その後の物語製作へと向かって徐々に着実に準備を進めて行く様子、そしてそれが結実して行く過程など。



今回の展示の特徴は、まず、原稿だったり、手紙だったりといった、肉筆の展示が膨大にあることでしょうか。

澁澤さんご本人の、文章に対するこだわりを垣間見ることができる一方、三島由紀夫をはじめとする人たちの率直な感想の手紙なども読むことができます。

時代背景もあるのか、文面はちょっぴり硬かったりですが、意外とぶっちゃけたことも言い合ったりしていたことがわかります。


また、サド裁判をはじめ、当時の新聞記事なども展示されていて、澁澤龍彦に対する当時の世間の評価がわかるようになっているのも興味深かったです。

ただ、文字が小さくて読みにくいものがあったりでちょっぴり困りましたけど…



全体として、「ここちよいサロン」という名のとおり、澁澤龍彦を中心とした人々の生き生きとした交流の中に自分も立っているかのような、不思議な雰囲気に包まれました。




帰路、港の見える丘公園の爽やかな潮風と、賑やかで幸せそうな喧騒が、酷く非現実的で妙な感覚でした。