メアリと魔女の花 感想

映画「メアリと魔女の花」を観ました。
7月8日、109シネマズ川崎にて1回目。
8月15日、109シネマズ湘南にて2回目。
原作未読。

ジブリがいっぱい。
・あちこち関連記事を読んでいた中で、「本作の魔法はアニメーションのメタファー」みたいな言説に対して「それじゃあ魔法消しちゃったらだめじゃん」みたいなつっこみが入っててかわいい。

・大叔母様と血が繋がっていたほうが物語としてのすわりはよさそうなのに、直系の血縁ではなさそうなあたりは比喩的ではあるのかも。



・1回目はだいぶ記憶が飛んでいて内容があやふやな感じでしたけど、2回目でようやく大まかな流れはつかめた気がします。

・メアリにとっては「魔法なんて要らない」のは当然です。
魔法を使わない世界で生活していた人間がたまたま巻き込まれて魔法の力を手にしてしまっただけなので、魔法を無効化することに対する葛藤は微塵もありません。

・たとえば、「魔法」が世界のエネルギー(電力など)の比喩であれば、魔法を失うと生活が不便になってしまうという葛藤が生じる余地があるはずです。

・実際、この映画で魔法が暴走するあたりの描写は、見ようによっては津波発電所が制御不能になった様子と重ねて見ることもできるでしょう。

・しかし、その暴走を止めた方法は「魔法を無効化すること」。
・おまけに無効化の範囲は狭く限定的で、メアリが元の家に帰る際にはやはりホウキで飛ぶ魔法を使って帰ります。
・魔法がすべて無効化されたわけではなかったのでした。



・先生方の落ち度としては、安全装置が不十分だったために事故に対処しきれなかった点があるでしょうか。
・しかしこれは焦りだったり想定外の事態に見舞われたりといった状況で、安全に万全を期するだけの準備ができていなかったこともありそうです。

・もちろん、準備が不十分な状態で危険が予想されてしかるべき実験を強行したという点においては、彼らの非を擁護できません。
・が、あえて擁護を試みるならば、彼らもまた大学の教員である以上は何らかの研究成果を上げることが求められていたのかもしれません。
・これまでなかなか成果を上げられずにいたために、予算を削減されていたり、任期の期限を設定されてしまっていたのかもしれません。
・資金も時間も限られていた中で、たまたま魔女の花という格好の研究材料が迷い込んできたとあっては、飛びつかずにはいられなかったのかもしれません。



・関連的に思い出すのは、「劇場版魔法科高校の劣等生」です。
・あれもまた追いつめられた研究機関の暴走という点で、類似性を見いだせると思います。



・心情的には研究者側に肩入れしたくなる気持ちもあります。
・が、単純にそうできないのは、本作も「魔法科高校の劣等生」も、人道的な倫理観を踏み外してしまっているからでしょう。

・もし仮に、彼らの研究が人道的倫理的には問題なく、ただ事故の危険性のみが問題点だったとしたら、物語はどう変わるでしょう。
・人身御供のような、人柱のような犠牲の上での研究は、それは即ち悪であるとして断じられても仕方ない、むしろ断じられるべき事態でしょう。
・しかし、あのエネルギー源が何らかの鉱石のようなものであったとしたら。
リリカルなのはReflectionに出てきた大きな結晶を研究材料にしていたならば。
・その時はおそらく外部から口出しするような余地は無かったはずだと思ってしまうのです。



・とはいえ、そんな夢のような新素材の結晶なんてものがおいそれと見つかるわけもなく。
・人間が潜在的に持っているはずの神秘的な力を引き出したい、という方向に進まざるを得なかったのかもしれません。



・話がまとまらなくなってきました。



・先生方はどうするべきだったのか。
・ピーターとメアリを引き離してしまったこと。あるいは、黒猫と灰猫とを引き離してしまったこと。これが最大の失敗のように思えます。
・仲のよい二人をムリヤリ別れさせようとしたところで、二人が元のように近づこうと引き寄せ合う力は余計に強まってしまうでしょう。
・であるならば、二人とも(あるいは二匹とも)一緒に確保しておくべきなのでしょう。

・余談ですが、「紅の豚」の冒頭でマンマユート団がスイミングスクールの生徒たちを誘拐した事件で、彼らは生徒たちの一部分ではなく、全員を連れていきます。
・言葉の上では「仲間はずれを作っちゃかわいそうじゃねえか」と言っていますが、むしろ、仲間はずれとして取り残された者たちが攫われた仲間を助けようと追ってくる、場合によっては救援まで連れてしまうかもしれない、という危険性を考慮するならば、全員まとめて連れていくという選択こそが正しいことになるはずです。

閑話休題、そんなわけで捕まえることができる場合はみんなまとめて捕まえておくべきだし、取り逃がしてしまったとなれば、捕まえた捕虜を救出しに来る可能性を考慮して備えておかねばなりません。

・などと思いつくまま書き出してみたものの、そういえば劇中の先生方もメアリがピーターを連れ戻しに来ることを想定していなかったわけではなかったのでした。
・メアリの追跡部隊も大勢繰り出していたし、研究所の周りにも見張り役をたくさん配備して警戒はしていたのでした。
・そんな警戒態勢の中をかいくぐって侵入してきてしまうという、プロットアーマーに守られた主人公補正こそが、先生方にとっての最大の敵だったのかもしれません。

・人間を変身魔法の実験台にしてしまったとき、先生方は人の道を踏み外してしまっていたのかもしれません。



・そういえば変身魔法が究極の魔法みたいな扱いだったようなに思えましたが、あの変身魔法をどのように応用しようとしていたのかしら。
・檻に入れられて泣いていた動物たちは成功だったのか失敗だったのかすらわからない感じだったような
・変身できるのも猫→サンショウウオみたいに1対1の関係でしか変身できないのかしら。
・マンガやアニメで見慣れている自由に何にでも変身できる能力と違って、変身できる対象が限定されているのは珍しいと思いますが、その制約がどういう意味を持つのか、ちょっと理解が及びませんでした。