映画「イン・ザ・ヒーロー」を観ました。
ぼくはわりと自分が過去に見聞きした他の作品と比較してしまう悪癖があるのですが、それを差し引いても、時代劇の斬られ役を描いた映画「太秦ライムライト」と比較されてしまうのは避けられないように思います。
熟年のこの道一筋で満身創痍のベテランさんと、男女の違いはあれども新進気鋭のアイドルさんと。
たまたまなのでしょうけれども、似たような構図が重なってしまうのはもったいなくもあります。
ただ、「太秦ライムライト」が斬られ役という散り去ることが宿命的なお話だったのに対して、こちらはあくまでも「ヒーロー」。
運命に立ち向かい、切り開いていくお話です。
若手アイドル俳優役の福士蒼汰さんといえば、自分の中では未だに「フォーゼの人」という認識で、おそらくは、もちろんその部分も加味しての配役だと思われますが、
これはもう歴としたアクション俳優さんであると認識を改めねばなりません。
如月弦太朗さんがアレでしたので少し見くびっていたところもありましたが、こんなにかっこよくなっていたとは。
見事なまでのはまり役でした。
ただこの「フォーゼの人」という認識がよくないのは、アイドルとして特撮に参入した際に態度が悪くて先輩方からお説教されるのですが、どうしても「いやいや、その人は既に1年間ヒーローやってましたから」みたいにつっこみたくなってしまうところ。
我ながら困ったものです。
しかしまあ、輝きが強すぎて、「ああ自分はヒーローにはなれないんだ」と周囲の人に感じさせてしまうというのも皮肉なものです。
ヒーローはやはりヒーロー然としていてこそ。
後半のハリウッドパートは、どうしてそうなった、とか、福士蒼汰さんどこ行った、とか、諸々ありますが、自分も「ハリウッド映画ってなんか売れてるみたいですけどアメリカよりすげーんですかねー」という発言に共感できてしまうくらいハリウッドに興味ないので、どうにも取って付けた感が拭えません。
チャンバラの大立ち回りは、決して悪い出来ではないとは思います。
ただ、いかにも昔ながらの古くさい感じがしてしまいました。
なんというか、メリハリがなくてただただ長いせいで緊迫感が薄れてだれてしまうというか。
白忍者さん独りだけで無双してたせいもあるかもしれませんが、あの大人数を相手に単身では、逆に相手側の不手際が目立ってしまう気がしたり。
せめて福士蒼汰さんとの競演ならば、とか思ってしまいます。
結末もなんだかちょっぴり湿っぽい取って付けたハッピーエンド。
最後の監督さんの台詞に至っては、どうしてあれを入れてしまったのか意味がわからない勢い。
余韻もへったくれもなくなりました。
あ、予告編でも流れている、白忍者さんが燃えていくところの迫力はすごかったです。
逆説的に、「太秦ライムライト」の上手さが浮き上がってきます。
主人公さんとヒロインさんとを対峙させて世代交代を強く印象付ける立ち回り。
結末の潔さと鮮やかさ。
今でも目に焼き付いているようです。
そんなこんなで、後半は少しもやもやもありましたが、総じては勇気をもらえる素敵なお話だったと思います。
何より主題歌が素晴らしい。
吉川晃司さんの歌声はたまりませんね。