さよなら神様

麻耶雄嵩「さよなら神様」、文藝春秋

神様ゲーム」既読。

自称・神様の小学生鈴木くんさんによる「犯人は○○だよ」という託宣から始まる、6編のお話。

「神様」は自称でしかないので、それを信じるか否かは主人公さんに委ねられ、その裏をとるべく少年探偵団が調査・推理に挑みます。

「神様」ははたして正しいのか、というところから始まり、いつの間にやら「正しい」とはどういうことか、みたいな観念的な方向へ行くのかと思いきや、お話はさらに明後日の方へ飛んでいきます。

すべては最後の数行に集約されていく、途方もない虚脱感。

まるで昔流行したKANさんの歌のようです。

小学生のうちからこんなどろどろの恋愛劇とかすげえなあとかえげつないなあとか思いますが、ネットで見かける小学生の実態的な記事を鵜呑みにすると、ごく一部であろうともこういう児童社会もあり得るのかもしれません。
おのれりあじゅう。

そんなわけで、無謬の「神様」の存在は、それを信奉し妄信する人々もいれば、それを「利用」しようとする狡猾な人間も出てくるようで、「神様」はどこまでそれを承知していたかはわかりませんが、結局のところはたちの悪い傍観者にすぎないようでもあります。

「神様」は正しいかもしれないし、間違っているのかもしれません。

真実はいつも闇の中。



以下、重箱の隅つつき。

・バレンタイン昔語り
p172、「この(改行)前のように」となっているのはさすがに誤植かしら。



・比土との対決
p187、神様が「らしい」って言っちゃった。
自分で創ったはずなのに。
さすがにマンボウの生態系までは認知の範囲外だったのかしら。



しかしまあ、本作のヒロインさんは、自覚がないわりに実はモテモテでした的な魔性で、(偏見があるかもしれませんが)典型的な少女まんがの主人公っぽくもあるのかもしれません。