コクリコ坂から

高橋千鶴(原作:佐山哲郎)「コクリコ坂から」(角川書店)を読みました

映画「コクリコ坂から」の原作です。
が、映画はかなり換骨奪胎されているようで、ずいぶんと内容が異なる印象です。

以下、原作および映画のネタバレに触れます










原作にあって、映画に足りない点がいくつか。

・「コクリコ坂」の名前が、映画では活かされていません。
原作では、わりと効果的に使われていました。

・弟くんの活躍が、映画ではほとんどみられませんでした。
ただ、映画ではわずかな台詞しかないのに、不思議と存在感がありました。

・映画には登場しない魅力的な人物が、原作には登場しますが、このあたりは尺の関係でしょうか。

・風間くんと水沼会長の関係
映画の描写でも充分に爽やかではありますが、原作ではもっと後ろ暗いところもあり、そういった面まで共有しているほどの関係性というのは、映画には不足しているかもしれません。




原作に無くて映画で付加された点

カルチェラタン
原形となる学生運動は原作にもありますが、「旧きもの」の象徴たるカルチェラタンの存在は、映画ならでは。
このあたりは、原作は原作でおもしろい細工がなされているので、あとはそこに込められた意味をどう読むか、でしょうか。
あのカルチェラタンの在り方そのものこそ、映画版が描きたかったものではないか、とすら思えます。

・直談判のくだりなんかも、結局はカルチェラタンの付属品でしょうか。



原作と映画の相違点

・北斗さんの存在
これはもう、意味合いがガラッと180度違ってます。
尺の関係ですかしら。



・親の職業
ずいぶんと意味合いが異なります。
が、映画の設定のほうが親切というか丁寧な説明になっているような気がしました。





そんなこんなで、映画と原作とで、ずいぶんと違った印象でした。

カルチェラタン関連を除けば、本質的には変わらないとも思いつつ。

映画→原作の順番で読む分には楽しめますが、原作→映画の順番の場合に楽しめるかどうかは、保証できかねます。