山王丸榊「書体の研究 for Degital Creators オタクのためのフォント読本」(晋遊舎)を読みました
同作者(ゆず屋)さんによる同名同人誌を、一冊にまとめて商業化したもののようです。
手元には同人誌版のvol.2 もあったりするのですが、
扱っている内容は同人誌版とほぼ同じ部分でも、文章は大幅に手を加えられていて、ずいぶんと違った印象を覚えます。
記述されている内容は大して変わっているわけように思えるのですが、
この文体の違いが、同人誌と商業誌との違い、読者との距離の差なのかしら、なんて思ったり。
書き下ろしもずいぶんあるようですし、同人誌版を所有している方でも楽しめるのではないかと。
お値段は張りますが。
中身は大きく二つに分かれていて、
前半の、『書体の知識編』では、
デジタルフォントの基礎知識、明朝体入門、ゴシック体入門から、フォントの買い方まで、
初心者向けの基礎知識がまとめられています。
とくに、ライセンスの問題などは、実用目的な内容になっているのではないでしょうか。
個人的に創作活動をなさっていて、販売目的の用途を考えていらっしゃるような方には、必須の知識ではないかと思います。
PCのOSに標準で付属しているようなフォントでも、商用利用には別途契約が必要だとか、ぼくは知りませんでした。
ユーザーの自覚程度によらず、ライセンス契約が存在するということは、知っておくべきなのでしょうね。
うちの会社でも(遅ればせながらようやく)ライセンス的なものの管理が厳しくなってきましたし、時流なのかもしれません。
後半は、『ろごたいぷっ!』と題した、実際のアニメやマンガ、ライトノベルなどで使用されている、書体の実用例になっています。
作品ごとに、書体の選択意図を考察されていて、興味深い内容になっています。
書体を少し変えるだけで、けっこう印象が違って見えるものなんだな〜と。
サンプルとして引用されているテキストがまた、その作品を知っているとより楽しめるようなものになっているのも、嬉しいです。
巻末には書体の見本集も掲載されていて、
ワード文書なんかを作成したときに、フォントをいろいろ変えてみてニヤニヤしたりできるような人間には楽しい付録になっています。
もちろん、実用的なサンプルでもあるのですが、
正直、それなりの修練を積まないと、違いがわかりません……。