中庭の出来事

恩田陸「中庭の出来事」(新潮文庫)を読みました

ややこしいミステリです。


「中庭」を舞台にしたやりとりが三通り、
1, 「中庭」にある喫茶店での、女性二人のやりとり、および、事件、
2, 同じ「中庭」の喫茶店で開催されたパーティーで起きた事件、
3, 別の、商店街の中の噴水のある「中庭」で起きた事件、
さらに、
4, 何処とも知れない場所を歩く男性二人の「旅人たち」のやりとり、
といったあたりの事件やら会話やらが出てくるわけですが、
登場人物が劇作家だったり女優さんだったりするので、
それが実際の事件なのか、劇作家が書いたお芝居なのか、
女優さん本人の行動・会話なのか、お芝居の中の演技・台詞なのか、
巧妙に入れ替わり立ち替わりするので、なんとも奇妙で心地よい眩暈感覚を楽しめます。

現実/虚構という単純な二元ではなくて、境界が曖昧で連続的で離散的な、奇妙な、でもある意味ではものすごく現実的なお話なのかもしれません。