俺の妹がこんなに可愛いわけがない

伏見つかさ俺の妹がこんなに可愛いわけがない」1〜3巻(電撃文庫)を読みました

高校生の高坂京介くんが、妹さんの高坂桐乃さんのために、あれやこれやするお話、だと思います。

桐乃さんは、『茶髪にピアスのいわゆるイマドキの女子中学生』で、雑誌の読者モデルに採用されるほどの淡麗な容姿に加えて、学業も優秀、所属する陸上部でも立派な成績を収めているという、非の打ち所のない完璧超人なのですが、
とある秘密を抱えていて、そのために、あまり関係が良好とは言えないお兄さまに「人生相談」を持ち掛けることになるのでした…。

中川翔子さんとか加藤夏希さんとか栗山千明さんみたいな人が妹だったらどうしましょう、みたいな妄想の産物のような設定ではありますが、
視点が、その趣味を保有しない京介くんの一人称で固定されているために、リアル妹持ちの諸兄も納得らしい、微妙な距離感の迫真的な描写になっていたりします。

それでも、読者視点だとニヤニヤものなわけですが。

現代視覚文化研究vol.3」(三才ブックス)の巻末にある「オタク彼女が欲しい!」という企画について、
たまごまごごはんさんが『男性的なオタク趣味のドリーム彼女』(意訳)みたいな言い方をしていましたが、
桐乃さんはまさにその妹版みたいなものなのかもしれません。

なんともドリームな妹さんです。

残念ながら京介くんにはその趣味がありませんので、多少もどかしさを感じる部分はありますが、
それによって生じる微妙な男女関係の逆転も、ファンタジー具合を増幅しているように思います。



1、2巻では、桐乃さんの抱える秘密によって生じる人間関係の軋轢がそれぞれ描かれることになります。

根底にある問題は複雑だったりするはずなのですが、ここでは、家族だったり友人だったりという身近な存在が、とてもわかりやすい形の壁となって立ち塞がります。

正直、こんなにわかりやすく真っ正面から立ちはだかってくれる障害というのも、今どき珍しいのではないかと感じてしまいますが、
問題が単純化されているおかげで、解決へ向かう際の壮快感が得られるのかなぁ、とも思います。

立ちはだかる敵によって窮地に陥るヒロインを颯爽と救い出す主人公。

友情、努力、勝利の、まさにバトルものの少年マンガみたいなノリですね。


で、3巻ではやや毛色が変わって、ケータイ小説だのライトノベルだのを題材とした、
作家志望の読者への電撃文庫からのアドバイス、みたいなお話でしょうか。

いや、京介くんと桐乃さんとの関係とか、いろいろと見るべき所はあるのですけども…


ともあれ、京介お兄さまの包容力というか懐の深さは大したもので、
疎遠な妹さんのためにここまでできるのは、なんだかすごいことだなぁ、とか思いました。