曲矢さんのエア彼氏―木村くんのエア彼女

中村九郎「曲矢さんのエア彼氏―木村くんのエア彼女」(ガガガ文庫)を読みました。

元バスケ部員の高校生木村カントくんが、夜の町中で、フツーの人には見えない騎馬兵と戦う曲矢サンノさんと出会うところからお話は始まります。

で、この曲矢さんは、銀髪長身の美男子である巽幸雄さんと、幼馴染み以上恋人未満な交際をしていたりするわけですが、
巽さんはフツーの人には見えない、いわゆる「エア彼氏」なのでした。

で、木村くんは曲矢さんの指導のもと、バスケットボールのバスケ子先輩を相手に、「エア彼女」の特訓をすることになっていきます…


このお話で特徴的なのは、エア彼氏彼女を持つ人たちは「エアリアル」と呼ばれていて、エアリアルの人には他の人のエア彼氏彼女が見えるどころか会話までできてしまうところです。

エア彼氏彼女が、エアリアル本人から離れて自律して行動していたりして、電車に無賃乗車はできないとか、融通のきかない律義なことを言ったりするわけです。

エアリアル同士でも、傾き具合によってエア彼氏彼女が見えたり見えなかったり、ということもあるようです。
そんなわけで、木村くんがいかにしてエア彼女と交際できるようになっていくか、みたいな展開もありつつ、
平行して、エア彼女オーディションなんていう、映画のオーディションの話が出てきたり、
バスケットでのトラウマめいた事件が絡んできたりします。


で、最終盤で、とある事実が発覚するのですが、これによって、それまで見えていた世界がガラッと反転してしまうような衝撃がありました。


…いや、まぁ、丁寧にしっかり読んでいれば、ある程度の見当はついたのかもしれませんが…

…とにかく、なんというか、ぼくにとってはちょっぴり読みにくい文体だったもので…

わりと台詞主体だったり、その台詞が誰から誰への発言なのかわかりにくかったり、地の文がぶつ切りで行間を創造で補間しなくちゃだったりで、
電撃文庫の思考経路をべたべただらだらと全部書いてくれるような文体に慣れてしまった頭にはなかなか手強い相手でした。