館島

東川篤哉「館島」(創元推理文庫)を読みました♪

『巨大な螺旋階段の下に倒れていた当主の死因は、転落死ではなく墜落死だった!?

天才建築家・十文字和臣の突然の死から半年が過ぎ、未亡人の意向により死の舞台となった異形の別荘に再び事件関係者が集められたとき、新たに連続殺人が勃発する。

嵐が警察の到着を阻むなか、館に滞在していた女探偵と若手刑事は敢然と謎に立ち向かう!

瀬戸内の孤島に屹立する、銀色の館で起きた殺人劇をコミカルな筆致で描いた意欲作。

驚愕のトリックが炸裂する本格ミステリ!』

…という、裏表紙の紹介文そのまんまのお話です。

六角形で屋上にはドーム型の展望室のある、銀色で覆われた奇妙な館が舞台です。

外観や内部の構造の描写から、何かに似てるな〜とか思ってたら、まさにそのまんまで笑って、いや、驚いてしまいました。

あからさまなくらいあからさまではありますけど、それでも、これだけ桁外れな規模の仕掛けは、圧倒的な威力があります。

映像化したりすると、出オチな勢いで速攻でネタバレしそうですけど、
その迫力はものすごいのになるのではないかと脳内で想像してみたり。


もうひとつ、紹介文には書かれていないのですが、198X年という時代背景が、わりと重要な意味を持っています。

瀬戸大橋が、その姿を現すまでにまだあと三、四年。

このお話の段階では、ようやく基礎ができあがったくらいで、海上にはまだ影も形もありません。

が、その未だ見ぬ瀬戸大橋が、舞台となる島にも影を落としているのでした。



…と、舞台装置はかなり本格的で、おまけに孤島で館ものという贅沢な構成なわけですが、
中身はずいぶんとコミカルです。


主人公となる若手刑事の相馬隆行さんは、
「長くて綺麗な髪だったなあ―」
とか
「長くて綺麗な脚だったなあ―」
とか言ってるような人ですし、
ヒロインの女探偵、小早川沙樹さんは、登場場面から、バレエを舞うようにくるくるくるくる踊ったかと思ったら、ジャガーの屋根に上ったりするような人です。

この相馬刑事と沙樹さんが、まるで漫才でも演じてるかのように、事件の捜査に乗り出します。

それにしても、真っ昼間っからアルコールを摂取してるだけに見えた沙樹さんの行動にもしっかり意味があって、解決に結び付いていくあたりはお見事でした。