縫い裁つ人 感想

映画「縫い裁つ人」を観ました。

原作未読。

これまた素晴らしかったです。

こちらはとにかく、中谷美紀さんの美しさを堪能する映像な気がします。

立ち姿やミシンに向かって座っている姿など、立ち居振る舞いというか所作がとにかく綺麗。

あの美しさが、ただありのままで美しいわけではなくて、あえて美しく在ろうと演じているらしい描写があるのも、好感度高いです。

お裁縫ということで、手や指先も度々映りますが、これまた美しい。

下手な人間が指先を絆創膏だらけにするのとは次元が違います。(当たり前でもありますが)

その美しさは、おそらく、撮影技術的な、光の加減とか陰影とか、レイアウト構図みたいな部分でのこだわりに支えられているのだろうと推測しますが、
あいにく専門的な技術用語とかはろくに知りもしないので、どうにも説明するための語彙が足りないのがもどかしくもあります。

場面転換の時の、坂道を人が上ってきたり下っていったりする画面が度々挿入されるのも、たぶん手法的な説明ができそうな気がしますけれども、何と言えばいいのかわからないのが悔しくもあり。



「夜会」の、どこか幻想的な夢のような世界も素敵。

大人だけの、大人でありながら「親」ではない姿で居られる舞台。

ありのままの姿ではく、きらびやかに着飾って装飾して演じて、少し違う自分になる瞬間。

おそらく「コスプレ」と通底すると思われる非日常の世界ではないかしら。

上流階級みたいな社交界への憧れを形にしたような。

実際のところ、ああいった場があったとしても、参加したところでどう振る舞えばいいのかわからなくて所在なくなるのが関の山だろうと思ってしまう自分が情けなくもありますが。



途中までは、恋愛要素として、101回目のプロポーズメソッドのような、途中から矢印が反転する系統かと思っていたのですが、結末が明示されないのも、観後の余韻が心地よい感じ。

中谷美紀さんの髪が伸びたのか髪型が変わっただけなのかはっきりしませんが、個人的にはあの顎くらいまでの髪の長さが好みなのかもしれません。

シルエットだけで、あれ?、なんか違うような?、と感じた程度でしたけれども。



あんなに落ち着いたような風を装ってはいても、こっそり描き貯めていたデザイン画が意外に派手めなのも、なんだか良い雰囲気でした。