毛皮のヴィーナス 感想

映画「毛皮のヴィーナス」を観ました。

原作「毛皮を着たヴィーナス」は読んだのだか読んでないのだか記憶があやふやで。
たぶん未読なんでしょう。

舞台劇と思われる「毛皮のヴィーナス」のオーディション風景から始まる、登場人物わずか2人というこぢんまりとしたお話ですが、
地の部分と劇中劇の部分との境界が曖昧な趣向。

この前観た「超能力研究部の3人」と似た方向性とも言えるかもしれませんけれども、
本作は何よりも演者さんの力が圧倒的です。

地の演技の部分と、お芝居をする演技の部分との切り替えに、おぉ、すげー、と思っていたら、いつの間にやらどっちがどっちだかわからなくなる迷宮に迷い込む感覚。

いやあ、楽しい。
すごい。

もちろん、題材自体が「マゾヒスト」の語源となったらしいだけあって、性的な支配/被支配の攻防戦みたいな駆け引きになっていくわけですが、
その倒錯っぷりもまた、すさまじい。

最後の暗黒太極拳も含めて、もはや、わけがわからないよ、という外ありません。

何でもかんでも、児童虐待だの性差別だのと社会問題に結びつけたがる風潮に対する皮肉も織り込まれつつ、
結局のところ、あのヴィーナスさんの正体が判らないところまで、
ものすごく蠱惑的で官能的で幻想的な、少し不思議な感じでありました。

大好き。