フランシス・ハ

映画「フランシス・ハ」を観ました。

奇遇にも続けざまにバレエダンサーさんのお話でした。

フランシスさんは27歳。

バレエダンサーのカンパニーに所属しているものの、正規のメンバーではなくて練習生みたいな位置にいるご様子。

ルームシェアしていた親友(♀)とは喧嘩別れ、交際相手(♂)とも喧嘩別れ。

散々です。

が、不思議と人の縁があるもので、あちらこちらを転々としていく、みたいな感じだったように思います。

不意に場面転換すると別の部屋に住み着いていました、みたいなことがざらにあるので、なんだかすげーです。

見知らぬ他人というほどではないにしても、その日初めて会った「友だちの友だち」くらいの間柄でもホイホイついていくあたり、異次元の感覚に思えます。

人の縁を紡ぐにはそのくらいの度胸が必要なのかしら。

現代日本の孤立無援社会とはかけ離れた、個人を尊重しながらも人と人が連結している世界で、
こういうのが西洋的な成熟なのかしら、と感心しました。



個人的な問題としては、西洋風の会話についていけなくて、冗談で言っているのか、本音なのか、建て前なのか、読み取れない、ということがありました。

台詞量が多くて字幕を読むので手いっぱいで、表情まで注意できなかったこともありますが、
への字口をしたり肩をすくめたりみたいな仕草のビミョーなニュアンスを感じ取るには練度が足りないみたいです。

時折、フランシスさんが一方的にしゃべり倒す場面があったりするのですが、それに対する周囲の反応も不可解で、「ああ、うん、そーだねー」みたいに受容しているのか、「何言ってんのこの子、頭大丈夫?」みたいに嘲笑しているのか、よくわかりません。

会話の中でチラッと出た「パリに行くなら部屋を貸すよ」、みたいな社交辞令を真に受けたフランシスさんが「じゃあこの週末に行きます」とか言い出したのに対しても、本心から「もちろんどうぞ」と歓迎して言っているのか、「え?、今の本気にしちゃったの?、いきなりすぎるでしょ」みたいにドン引きしていたのかも、よくわかりませんでした。

そういうことを気にするのは、いかにも日本人的な顔色伺いの姿勢なのかもしれませんけれども、
逆に、西洋の人たちにとってはあれがフツーなのかしら。
それとも、西洋の人の中でもやはり空気が読めていない部類に入るのかしら。

どうにも、据わりが悪い感じです。



なんだかんだで、バレエダンサーとしては大成しなかったかもしれませんけれども、演出家としてやっていけるのであれば、それはそれで大成功なのでしょうなあ。