小野不由美「月の影 影の海(上) 十二国記」(講談社文庫)を読みました。
十二国記の第一章でしょうか。
女子高校生の中嶋陽子さんが、異世界へと誘われて、妖魔や人々に翻弄されていきます。
優等生の女子高校生さんがずたぼろになっているかと思うと、どきどきわくわくします。
謎のケイキさんもこんな気分なのでしょうか。
まったく趣味の悪いことです。
宝剣の見せる幻やら、お猿さんの挑発やら、人々の裏切りやら、妖魔の襲撃やらで、どんどんと疲弊し、人を信じられなくなり、精神的にも肉体的にも追い込まれて行く姿は、なんとも痛々しくて、心が踊ります。
主人公さんの心情への共感もさることながら、傍観者ならではの気安さでのんべんだらりと眺めていられるというのは、映画「カイジ」シリーズで描かれるブレイブメンロードの観客の心境を味わえるかのようです。
あの最高に最低な人々と席を並べることができるというのは、なんとも贅沢なことに思えます。
そんな至上の快楽を味わわせてくださるこの展開、はてさてどのような結末が待っているのやら。
下巻を楽しみにしたいと思います。