獣の奏者・I闘蛇編/II王獣編

上橋菜穂子獣の奏者・I闘蛇編/II王獣編」(講談社文庫)を読みました

NHK教育放送五十周年記念番組としてアニメ版も絶賛放送中のお話です。

各巻の副題にもなっている闘蛇、および、王獣という、架空の生き物が、国家の根幹に深く根付いている世界で、異端の子エリンさんが成長していく姿を描いているように見えて、なんだかもっと別の、より広くて深い世界を描いているようにも思えます。

率直な印象として、宮崎駿さんのまんが版「風の谷のナウシカ」(徳間書店)や、ル=グウィンさんの「ゲド戦記」と肩を並べるほどの、確固とした世界における奥行きのある物語が展開されています。

いや、ついつい、エリンさんと王獣リランさんとの関係から、ナウシカさんとオーマさんの関係を連想してしまったのですが。



ただ、今回のI、II巻では、あくまでも、エリンさんとリランさん、人と獣の交流の部分に焦点が当てられていて、マクロ的な国家の問題はどうしても別進行な印象があります。

これは、ナウシカさんが、小国とはいえ一国の長の地位であったのに対して、
エリンさんは出自が若干特殊な上に、成長過程でも社会的な生活とはやや疎遠であったことも影響があるのかもしれません。

ただ、事前の情報によると、続編にあたるIII、IV巻では、よりマクロなお話が描かれるようで、うーん、やっぱりハードカバーに手を出しちゃおうかしら…


また、文庫版のあとがきによると、現在放送中のアニメ版における、原作からの変更点については、原作者の意図も反映されているようです。

アニメ版のラストには、続編も含めた全四巻を包括するような仕掛けもあるようなので、
今更ではありますが、やはりアニメ版もしっかりちぇっくしていこうと決意を新たにしたのでした。