映画「STAND BY ME ドラえもん」を観ました。
3D版。
原作既読。
「未来の国からはるばると」「たまごの中のしずちゃん」「しずちゃんさようなら」「雪山のロマンス」「のび太の結婚前夜」「さようならドラえもん」「帰ってきたドラえもん」をつなげたようなお話。
テーマ別文庫であった恋愛編とかのび太・しずか編とかあの辺の感じ、と思ったもののいまいち収録作品がわからなくてもやもやしてみたり。
テーマ別文庫なんかにまとまる以前にも、のび×しず要素の変遷を追いかけて初期のしずちゃんさん冷たいなとか思ったり、しずちゃんさんの入浴場面だけ付箋つけておいたりしましたよね。
しませんか、そうですか。
のび太さんってば、けっこう充実した小学生を過ごしてるんですよね。
しずちゃんさんは理想の嫁さんすぎて、読者が結婚相手への理想を高く設定しすぎて結果として結婚できない症候群を引き起こしている遠因なのではないかと疑いたくなる勢い。
こんなダメな自分でも気にかけてくれる女性がいつかどこかでひょっこり現れるのではないかと夢描いてしまいます。
ピーナッツ食べたり焼き芋食べたりといった身近な感じも合わせ持っているので最強に見えます。
一般的な入浴場面での恥じらいから、巨大化してみたり胃の中に飲み込まれてみたりと、多様な嗜好性を体験させてくださったものです。
もう一方の遠因は、空から女の子が〜的なアレ。
原作ののび太さんは浮気を画策したりともっと貪欲な面もありますが、ここでは余談ですね。
そんなわけで、この映画の中軸はのび太さんとしずちゃんさんとのお話に集約されているとも言えましょう。
原作からの改変で上手いと思ったのは、「しずちゃんさようなら」パートで、のび太さんとしずちゃんさんのパパさんを対面させているところ。
「結婚前夜」のあの感動的な台詞に対して、パパさんはどうしてそんなにのび太さんへの評価が高いのか、みたいな疑問がありましたが、あそこで接点を持ったことでその説得力が増したように感じました。
しかしまあ、原作からの問題とはいえ、ジャイ子さんを全否定してしまう態度はなんともモヤモヤします。
ジャイ子さんルートだって、のび太さんは起業はしてるし、子だくさんだし、不幸どころか立派なものではないですか。
ジャイ子さんがまんが家クリスチーネ剛田として成功しているならなおのこと。
玉の輿といってもいいくらい。
幼少の頃からの、ジャイ子さんはダメでしずちゃんさんが絶対大正義、みたいな価値観を植えつけられて育った恐ろしさですよ。
洗脳されているといっても過言ではなさそう。
妥協を知らないというか理想が高いというか。
(以下、繰り返し)
話題の〈成し遂げプログラム〉に関しては、映画一本におさめるための機能としては確かに効果的だったのかもしれません。
緊箍児(名前わからなくて今ぐぐった)からの発想なのでしょうけれども、お話のための機能という感じ。
AERA誌のジブリ特集で庵野秀明さんが宮崎駿監督の言として紹介していたような、お話の「整合性」を気にした結果の産物にも見えます。
(ちなみに「整合性」の発言はあくまでも庵野さんから見た宮崎駿評であって、エヴァを含む自作についての発言ではないので注意が必要だと思います。)
そんなこんなで、経緯はともあれのび太さんの成長譚としてきれいにまとまったな〜、と思いきや。
こんな余計な機能を付加してまで一本のお話としてまとめたかったのなら、「帰ってきたドラえもん」は蛇足だったように思えてしまいます。
「さようならドラえもん」で素直に終わっていてもよかったのに。
原作はノリと勢いと語りの巧妙さでうまいことごまかしている部分も多々あると思っているので、しっかり作ろうとすればするほどアラが目立ってしまうのかもしれません。
3DCGのクネクネした奇矯な動きは、原作のオーバーリアクションを再現していると思えば、案外気にならないものでした。
星野スミレさんがけっこう推されていたので、次はパーマンさんかしら。
ポスターを飾るグラビアアイドルさんがディナーショウを開催するようになるのも時代の変遷なのかもしれません。