映画「朽ちた手押し車」を見ました。
1984年の作品ですがお蔵入りになっていたものだそうです。
特殊メイクの三國連太郎さんや、ラピュタのドーラ船長というくらいしか存じ上げなかった初井言榮さんのお姿を拝見できます。
舞台は北陸の漁村。
認知症の問題やら安楽死の問題やら、今でも通用するというか、むしろ30年経った今になってようやく受け入れられるようになった題材なのかもしれません。
親子三代同居の大家族は今となっては珍しいでしょうか。
祖父←孫←祖母←父←母←→祖母のリレーとかはちょっぴりおもしろかったですが、
基本的には重苦しい、沈んだような雰囲気に支配されていた気がします。
認知症については、実はあまり身近ではないもので、なんだかたいへんそうだなあ、くらいにしか未だに認識していなかったりします。
いずれは父母の世話をすることになるのかもしれませんが、できるだけ達者でいてもらいたいものです。
尊厳死については、母親を楽にしてやりたいという長男に対して突っぱねるお医者さんの倫理的な態度がかっこいいと思いましたが、なんだかんだでうやむやに。
むしろ昨今顕在化しつつある旧来のニッポン的な隠蔽体質を風刺しているかのようです。
でもまあ体裁とか建前って大切ですよね。
そんなわけで、北陸の海や山を背景に練り歩く昔ながらの葬列の場面の厳かさが美しいと感じる反面、実際には目にする機会などないと思うと、こういう光景も失われていくのかなあと悲しくなるのでした。