泥棒役者 感想

映画「泥棒役者」を観ました。
11月19日、109シネマズ湘南にて。
舞台版未見。

シチュエーション・コメディというのでしょうか。
お屋敷に侵入した二人組の泥棒と、そのお屋敷の主である絵本作家と、その担当編集者と、たまたまお屋敷に訪問販売に来たセールスマン。(と、お隣さん)

絵本作家先生のお屋敷という限られた舞台の中で、勘違いやらすれ違いやらといった登場人物それぞれの状況認識の相異をコミカルに描きつつ、各人の背負った問題や悩みが知らず知らずのうちに解消されていくみたいな構成。

一見するとヘンテコなお話ではあるのですが、お話の転がり方が、強引な部分はあるにせよ、わりかし自然な流れだと感じてしまうくらいにはなめらかに転がっていって、ケラケラとおもしろおかしく笑いながらも、時折ぐっと目頭が熱くなる描写が挟まれて、こういうお話好きだなあとしみじみ感じました。

とくに編集さんの、編集長からあなたの考えなんて要らないと強く言われて呪縛のようになっていたものから解放されたところに、ぐっときました。

訪問販売さんもわかってるのだかわかってないのだかわからないような絶妙な間だったり、劇中では「空気が読めない」という扱いでしたけれどもむしろ場の雰囲気というか調和を気にしているような立ち位置だったのかしらと思います。

作家先生のノリの良さとかすっとぼけたような軽さとを持ちつつも、大事なところではビシッとした鋭さを見せたり、年長者ならではの場の仕切り方が見事だったり、一方では泥棒さんに対するお説教や許しが実は自身の抱える後悔によるものだったりと、深みのある人物像。
あの後悔とどれだけ長い間向き合ってきたのかと思うと、なんだか果てしなくも思えます。

編集長さんがそんな作家先生を支えてくれていたのなら少しばかりでも救いになったのかもですが、一編集としてだけではなく、編集長という責任ある立場になったことで、あの人もまた苦しい判断をせざるをえなかったのかもしれないし、だからこそ自分自身で原稿を受け取りに来ることはできなかったみたいな葛藤もあるのかも。

お隣の片桐仁さんは舞台版の主演だそうですが、こういう試みは受け手側としてはおもしろくもある反面、演じる側はどういう気持ちなのかしら。

そういえば最後に、西田監督の前作の小野寺の姉弟も出演されてたんでした。

なんかそういうつながりを大事にしているのかしら。



そんなわけで、楽しかったです。