デジモンアドベンチャー tri.第5章「共生」 感想

デジモンアドベンチャー tri.第5章「共生」」を観ました。
9月30日、横浜ブルク13にて。

なんというか、言葉が難しいですが、アニメーション作品を作るって大変なんだなあと改めて感じました。

単純にぼく個人の好みの問題ではあるのですが、もう少しこうならいいのにと思ったところを以下つらつらと妄想。



入場特典で貰ったポストカードにもあるお泊まり会のくだりとか、完全に止め絵にしてしまって音声だけお楽しみくださいとでもしてしまってもよかったのではないかしら。

あれだけの人数がいながら、問題の焦点となっているのが1人だけなので、大勢でよってたかってああでもないこうでもないと言っているだけのように見えてしまってもどかしいというか。

メガネさんに対して2人きりになって会話していたような場面があって、そうやって1対1で対話することでお互いの立場や考え方を分かり合える、共有できる、というのはとても重要だと思いました。
人間のほうと、パートナーであるデジモンとでお互いにフォローし合う関係なのも見ることができましたし。
こういうのを他の組み合わせでも見たかったです。

みんなでかたまって行動してしまっていたので、なかなか1対1で向き合うことができていなかったような。

たしか前章では、グループが分断されて別行動を余儀なくされていたために、個別の組み合わせを見ることができてたような気がします。
それも定番の組み合わせだけでなくて、普段あまり2人きりにならないような組み合わせのシチュエーションを用意することで描けていたものがあったと思います。(うろ覚えではありますが)

今回は、みんなで一緒に集まって、みんなで一緒に行動して、みんなで一緒に話し合って、という状況ばかりだったように、いま振り返ると感じます。
それはそれでみんな仲良しでけっこうなことですが、お話としては変わり映えしなくて単調に見えてしまったのかもしれません。

問題を抱えてるのがメガネさんとメイちゃんだけみたくなっていて、あとたしかメガネ先輩も受験の悩みがあったような気がしますけど、その他の人たちが宙ぶらりんというか、小さい頃に大冒険したけど日常に戻ったらこれといった目標もなく熱中できるものもなく空っぽで、子役のときに大ヒット映画に出演したもののその後が続かなくてくすぶっているような、なんかどうにもならないモヤモヤを抱えているのが1人くらいならまだしも似たような境遇の仲間だけで固まっているおかげでさほど役割分担できるでもなく、グダグダと結論の出ないようなしょうもないことを堂々巡りしているだけみたいな状況に陥っていて、見ている側としてもなんだかモヤモヤするばかりでスッキリしない感じでした。

先生も政府関係の特殊機関の人なのかと思ってたのに警察あたりに話が通ってないし。
ある程度極秘にしないといけないのかもしれませんけど、それ以上に縦割りの垣根を超えて他部署と協力しなくちゃいけない状況でしょうに、そういう協力体制もできていないみたいだし。

子供たちが役に立ちそうもないなら、或いはたとえ子供たちの力を当てにせざるを得ない部分があるにせよ、大人には大人なりにやるべき仕事があるはずで、たとえば何が起きているのかわかっている範囲だけでも説明しておいたほうがいいでしょうし、なんならもっと広く人材を集めてもいいはずで。

こういう行政機関あたりの対応についてはシン・ゴジラレクリエイターズで柔軟に組織的な行動をしていたのを見ていたので、本作で主人公たちが不審者扱いされて警察に抑留されてしまうような連携の悪さがもどかしく見えてしまったのかもしれません。

ああいう融通のきかない人たちが登場すること自体を否定するつもりはないのですが、どうせならあの警察の人たちをもう少し印象深いインパクトのある人物像にしておいてくれて、後々に大規模な反抗作戦を決行するときに再登場して融通がきかないなりに大人の矜持を見せてくれるみたいな展開なら胸が熱くなること間違いないと思うのです。

大河ドラマのおんな城主直虎でも、登場した時はイヤな人に見えた人物が、他の場面ではまた違った様子を見せたりと、多面的で立体的な人物像が描かれています。
主人公たち物語の中心近くの登場人物だけでなく、周囲の、敵対している人だったり、この物語としては脇役のような人であっても、それぞれに背景や来歴があって、信念があって、生き様があるように描かれています。

本作も、たとえばお母さんが子供たちのためにたくさん料理を用意して待っていてくれるというのはとてもぐっとくる良い描写でした。
が、同時に、そういう側面があの一家の分しか描かれなかったのをもの足りなくも感じてしまいます。
他の子のご家族はどうしていたのか、見たかったです。


などと不満を募らせてはきたものの、終盤の展開は、衝撃でした。

これでまたグループが分断されるのかしら、なんて思っていたらそんな生易しいものではなく。
あの地割れの場面での一連の動きのアニメーション作画の凄さもあいまって、なんというか、どうなるんだろうと期待よりも不安が大きい心境です。

次章が重暗くなりそうなので今回の肝試しパーティーあたりで明るくしておきたかったのかもしれませんけれどもさほど明るくなりきれていなかったように思えてしまったというか、あそこのパーティーがとってつけた感じられてしまっていまいち乗れなかったぼく自身の問題ではあります。

帰ってきたからといって親と一緒に抱き合うような年齢でもないのでしょうけど、見ているこちらが年齢的に親御さんのほうに近いだろうこともあって、あのたくさん用意された食べられず仕舞いの料理のほうが気がかりで、子供たちがわいきゃいはしゃいでいるのを素直に楽しめなかったというか。

あそこで一旦自宅に帰って両親と話ができていれば、そこに解決の糸口とは言わないまでも、なんらかの現状打破の兆しが見えそうなものですが、自宅に帰ることも許されず、唯一身近な存在である先生ですら相談どころかお互いに持っている情報や状況の共有すら不十分な感じで、子供たちも自分たちだけではどうにもならない状況なのに頼れる相手がいなくて苦しさしかなくて。
あれだけ事件の核に近い子供たちがいるのをわかっていながら、なんであんなにサポートが少ないんだろうという上に書いた不満に戻ってしまいそうなので、ひとまずここまで。