ジャングルブック 感想

映画「ジャングルブック」を観ました。
8月15日、横浜ブルク13にて。
2D吹替版。
原作未読。

ジャングルで狼に育てられた少年のお話。

『アーロと少年』や『ズートピア』があってからの本作なので、本作単独ですごいというよりも、1作ごとに着実にステップアップしているように思えます。

ジャングルの映像にしても動物たちの動きにしても、これまでの作品群の集大成と見ることもできそうな気がします。

とてもおもしろく見ていましたが、優等生的なおもしろさ以上のものをぼくには見出すことはできなかった気がします。
あくまでもモーグリ少年1人を中心にしたお話でしかないように見えました。

狼たちや黒ヒョウやクマやヘビやサルや、もちろんトラも、それぞれ魅力的ではあります。

筋書きも大きな瑕疵はなさそうですし、(終盤のモーグリ少年の行動については減点もあるかもですが)、映像も音楽も、高水準で整っているように見えます。

ただ、少なくともぼく個人にとっては、突き抜けた何かを感じるほどではなかった気がします。

ものすごく贅沢なことを言うようですが、「よくできた作品」ではあるものの、ぼくにとっては「特別な作品」というほどではありませんでした。



これは事前に大絶賛の記事を読んでしまっていて期待が上がりすぎていたのも影響があったのかもしれません。

あの記事を書いた方には、ぼくには見つけられなかった革新的な映像が見えていたのかもしれないと思うと少し悔しくもあります。


ネガティブなことばかり書いてしまいましたが、良かった点、個人的に好きな点も。

まず何といっても、モーグリ少年の育ての親にあたる狼(♀)がとても色っぽい。
たしか吹替は宮沢りえさんだったでしょうか。

トラに言い寄られる場面などは、DQN に関係を迫られる人妻みたいな様相にも見えました。
その場面でトラが語るのがカッコウの託卵の話というのも示唆的です。

ヘビのねっとりしたいやらしさもセクシーでした。
年端もいかない少年相手に緊縛プレイ。

黒ヒョウとクマの関係もいい感じ。主にびーえる的な意味で。
最後に、よくがんばったな、みたいなことを言ってペロッとなめるあたりは実質的になんちゃらかんちゃら。

溶鉱炉に沈んでいく彼の姿は感動的でした。

と言えればよかったのですが、けっこうモヤモヤした気持ちも残ってしまいました。

赤い花、怖い。
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エンディングの映像、楽しい。
かわいい。

そういえば、モーグリ少年はヒトの社会で生活した記憶は無いはずなのに道具作りがテキパキできてすごいと思いました。
前知識を何も持たなくても植物の蔓を編んで丈夫なロープにしたり、石を叩いて割って鋭利な刃物として使ったり、木の実の殻を器として使うだけでなく持ち手をつけて水を掬いやすくしたりと、お手本なんてない環境にもかかわらず独創的なことをやっていて、すごいと思いました。


後付けになりますが、モーグリ少年とトラ(シアカーン)との決着はあれでよかったのか、もう少し咀嚼する必要がありそうです。

モーグリ少年=ヒトに対して、ジャングルの動物たちがどう接するべきだったのか。

終盤にモーグリ少年は「火」を使い森を焼いてしまいます。
他の「ヒト」と同じように、ジャングルの秩序を乱す危険な行為だったでしょう。
被害が拡大せずに済んだからといってお咎め無しで済ませていい問題には見えません。

一方、トラ=シアカーンは、発端は自分がモーグリ少年の父親にケガを負わされた復讐だったかもしれませんが、「ジャングルにヒトを入れてはならない」という掟に従っていたのはむしろ彼のほうでしょう。少しばかり高圧的な性格が災いして他のジャングルの仲間たちと打ち解けることができていなかったために、正しいことを主張していたにもかかわらず、情に流されて掟をねじ曲げるような連中が大多数になったせいで、本来は正論のはずのトラがジャングルから排除されてしまう、という構図としてみると、心が痛くなります。

「託卵」の挿話の意味も違って見えてきます。

ヒトというカッコウモーグリ少年という卵をジャングルに託して育ててもらった。
本来ジャングルの子であるはずのトラは、モーグリ少年にその座を取って代わられてしまった。

哀しいお話です。