ワンピースフィルムゴールド 感想

映画「ワンピースフィルムゴールド」を観ました。
8月12日、川崎チネチッタにて。

原作ほとんど未読。
テレビアニメシリーズほとんど未見。

麦わらの海賊さんたちがカジノの船(島)へ行くお話。

正直なところ、とても複雑な感想です。

「おもしろい」と感じる部分もたしかにあることはありましたし、それを楽しんでいた自分もいるのですが、根幹の部分が個人的にはあまり好きではないため、諸手を上げて賛辞を贈るのは気が引けてしまいます。


良かった点

カジノという賭け事の場ですが、フェアな勝負に限られているわけではなく、イカサマまがいの騙し騙されが許される世界であって、騙されたほうが悪い、うまく騙したほうが正しいという、ともすると歪んだ倫理観の世界ではあります。

が、そのおかげで、如何にして騙し騙されるかという駆け引きの側面が強くなっています。

暴力でごり押しする作品だとばかり思い込んでいたので、こういう絡め手がキレイに使われているのは予想外でしたし、オチもスッパリ決まってスッキリしました。


嫌いな点

主人公である麦わらさんの考え無しの行動原理が、ぼくの肌には合いませんでした。

また、何かと「自由ガー」「自由ガー」と自由至上主義っぽいのも、個人的には好ましく思えません。

明確なビジョンを持たないままクーデターを起こしたところでその先にはどん詰まりしかないことは目に見えているわけで。

通りすがりの海賊団でしかない麦わらさん一味がトップを転覆させたところで、その後の責任なんか持ちやしないだろうに……、とぶつくさ思いながら見てしまいました。

結末としては杞憂に終わりましたけれども、見ている最中のヤキモキイライラ感までは拭えません。



これについてはわずか2時間程度の映画に求めるのは過剰かもしれません。

テレビアニメ「エンドライド」では1クール目で悪逆の王(とされている人物)が倒れて、2クール目に入ってから、王を失って秩序が乱れた世界を如何にして立て直すかというテーマに踏み込み始めました。

じっくり描こうと思ったら相応の時間を費やす必要のあるテーマです。

あれだけ大規模の、全世界の20%にも及ぶ資本を占有している(と言ってたはずだけどもしかしたらそれ自体が嘘だったのかも)組織を解体するだけしておいてメデタシメデタシでは解決になっていないように思えてしまいます。

曲がりなりにもあそこで暮らしていた人たちが突然、何の支援もなく放り出されてしまったら、難民が溢れかえってしまうのではないかしら。

そんなところまでは麦わらさんの守備範囲外なのかもしれませんけれども、そういう身内さえよければいいみたいな無責任さが感じられて釈然としません。

もしかしたら本編を読んだり見たりすればそのあたりもフォローされているのかもしれませんけれども、少なくとも、ぼくが断片的に得ている情報だけでは、「ワンピース」という作品に対する印象は悪くなるばかりです。


この作品を見て変わったこと

麦わらさんご一行さえ来なければこんなことにならずに済んだろうに、ラキラキの実の効力にも限界はあるのかもしれません。


その他、枝葉末節

パロディやオマージュと思われるものがあちこちに散りばめられていましたが、残念ながらぼくには元ネタがわかるものは少なかったです。

自動車レース

自動車レース自体もですが、(スペース☆ダンディを思い出しますが他にもたくさんあるはず)、ドライバーにホワイトジャックと名乗る無免許医がいたりとか。
他のドライバーも元ネタありそう。

カリオストロの城

(ちなみにぼく自身はカリオストロの城が原体験みたいなものなのでもっと遡った元ネタまでは把握していません)

なんとなくではありますが、ルパン三世カリオストロの城を想起させる場面が多かった気がします。
カリオストロの冒頭で公営カジノが出てきましたし、大金を金庫に隠し持っていて盗賊が盗みに入ろうとしたけど成功した者はいないというあたりもゴート札っぽい。
塔をよじ登ろうとしてつるりと滑り落ちちゃうところとか、時計盤もこじつければカリオストロに見えなくもない。

だから何かと言えるわけではなく、ただ似てるなーっと思った程度ではありますが。

黄金聖闘士

どう見ても、というほどではないものの、黄金聖衣ですわよね。

捕らわれのゾロさん

レイーン、お前が好きだー、お前が欲しいー!

ガイコツの人とかロケットパンチの人とかは存在自体を知りませんでした。
海軍側の人たちも意味ありげな、麦わらさんの関係者っぽい人もいましたけどよく知りません。
麦わらさんに復讐しようとしてたっぽい仮面の人も知らないし、宇宙服みたいなのを着てた人たちのことも知らないし。
ある程度は本編を知っておかないとわからないことがたくさんあるみたいです。

デスビリヤードやデスパレードみたいな文字通りに命懸けの賭け事が脳裏にあったせいか、麦わらさんが大金を賭けておきながら負けたら負けちゃったカーとか軽い調子なのも気に障るし、その負けによってペナルティーが課されると途端に逆ギレし始めて、そこに何ら反省もなく俺は悪くないあいつらが悪いの一点張りで、無責任とか無鉄砲とかかわいいものではなくて、ただのバカなのではなかろうか、としか思えません。


そんなこんなで、やっぱりぼくは麦わらさんが大嫌いなのだなあと改めて思いました。

ナミさんとかカリーナさんとかロビンさんとかバカラさんには罪は無いのですけれども。