ヒメアノ〜ル 感想

映画「ヒメアノ〜ル」を観ました。
5月29日、静岡東宝会館にて。
原作未読。

職場の先輩である〈安藤さん〉(ムロツヨシさん)が密かに想いを寄せていた女性(佐津川愛美さん)とうっかり親密になってしまった〈岡田くん〉(濱田岳さん)と、高校時代に同級生だった〈森田くん〉(森田剛さん)のお話。

(失礼ながら)J の人でもこんな役柄をやっちゃうのか、というのがまずありましたが、見ているうちにJ どうこうはもはや関係なく、純粋にその演技の迫力に飲み込まれていきました。
すごかったです。

包丁で刺した時の血の出方とか、銃で撃った時の血飛沫の撥ね方とか、鈍器で殴った時の血の滲み方とか、殴られてちびる感じとか、あれが現実的に正しい描写であるかどうかはよくわかりませんが、ともかくこだわりがすごいように見えました。

あと、〈森田くん〉の非力さが、痛々しいです。
刃物とか鈍器とかで武装した上で、不意打ちでの襲撃ならどうにかやり遂げることができる程度でしかなく、相手が身構えていたり体格がよかったりすると満足に押し倒すこともできなかったりとか。
森田剛さん本来の腕力ではなくて、役柄として非力さを演じているのでしょうけれども、〈森田くん〉の境遇や経歴がよくわかるような、痛ましい姿だったように思います。

白眉は、〈岡田くん〉が成就した場面と〈森田くん〉がやらかした場面とが交互に切り替わって対比されるところでしょうか。
動画サイトの用語でケツドラムと呼ばれるものがありますが、あの要領でリズムを刻んでいて、お互いに方向は違うながらも、のっぴきならない状態に踏み込んでいく緊迫感が高揚していったように感じました。

難を言うと、〈森田くん〉が(佐津川愛美さん)に執着した理由がよくわからなかった気がします。
佐津川愛美さん)はあんな感じで(俗にオタクを殺す系な感じなので)、とくに(俗にいう)非モテ系男子を勘違いさせてしまいやすい人っぽいため、どこかしらのちょっとしたすれ違いから〈森田くん〉の心に火が着いてしまったのではないかと推察しますが、その描写があるのとないのとでは〈森田くん〉の行動の説得力が違ってしまうような気がします。
(そもそもぼくが見落としていただけで描写されていたかもですが)

最後の回想が〈森田くん〉と〈岡田くん〉の回想だったおかげで、〈森田くん〉が執着していた対象が(佐津川愛美さん)だったのか〈岡田くん〉だったのかブレてしまったような気がしてしまいまして。
あの回想は〈岡田くん〉視点の回想だったから〈森田くん〉視点だとまた違うのかもですが。

余談ですが、森田剛さんが〈森田くん〉という役名で、濱田岳さんが〈岡田くん〉という役名だったもので、〈森田くん〉〈岡田くん〉と呼び合っていると濱田岳さんに重ねて別の方の姿が見えてくるような気がして、なんだか微笑ましかったです。