インサイド・ヘッド 感想
映画「インサイド・ヘッド」を観ました。
3D吹替版。
0.
本編は、おもしろかったです。
が、手放しで絶賛というほどでもなかった感じです。
1.
まず監督さんからのご挨拶。
???
わざわざあんなコメントを挿入した意図がよくわかりません。
悪いことではないと思いますけど、あえて入れるだけの理由があったのかはよくわかりませんでした。
2.
ドリカムさんのアレは結婚披露宴のスライドショーというのが言い得て妙。
幸せの押し売りのうざったさという意味では、本編のヨロコビさんへのヘイトを補強しているかのように感じました。
3.
歌う火山島のお話。
なんだか古臭いヘテロなお話に見えました。
とくに女性側のいかにもな女性らしさな黒髪長髪小顔な造形。
悪いことではないと思いますけど、とくにどうということもないような、何も感じることのないような。
4.
ようやく本編。
本編は、おもしろかったです。
が、意外にも『脳内ポイズンベリー』と大差ないような印象でもあります。
ドタバタのスケールは段違いでこちらの『インサイド・ヘッド』の方が大きいですが、ライリーさんの脳内だけでまとまってしまったように見えてしまうのが、少し不服です。
ヨロコビさんとカナシミさんの大冒険と、ライリーさん本人の体験経験部分とが、さほど関連づけられていたように思えなかったのかもしれません。
ヨロコビさんやカナシミさんが経てきたあの大冒険を、ライリーさん本人は感じることがないのでしょう。
それはライリーさんの経験値として加算されるものなのでしょうか。
素人考えではありますが、たとえば、クラスメートのメッシュの子とか、外界からの刺激があってもよかったんじゃないかと思いました。
ミネソタの幼なじみの子でも、ホッケーチームの子でもかまいませんけれども、家族以外の外側の人との接点があってもよかったんじゃないかなあ、とか思います。
個人的な体感としては、独りで、頭の中だけでモヤモヤしていても、ろくな事はありません。
内に内に閉じこもっていってしまうだけです。
もちろん、本作の結論である解決策は素晴らしいし、とても大切なことではあるのですが、
それをもたらしたのがライリーさん本人の体験ではなくて、ヨロコビさんとカナシミさんの大冒険だったのが、なんだか残念なんです。
ヨロコビさんとカナシミさんの大冒険は、ドキドキハラハラのスリリングな大アクションではありました。
けど、ライリーさん本人は、それをどれだけ知覚できたのでしょう。
脳内の5人の意思決定と、ライリーさん自身の人格の部分との関係性が、いまひとつ明瞭ではなかったのかなあ、と感じます。
ライリーさん本人の生理的な、あるいは反射的な身体反応が先ずあって、それに対して脳内の5人が後から反応を決めているように見えますが、なんとなく、脳内の5人とは別に、「ライリーさん本人」という部分があるのではないかと感じました。
これはどちらかというと『脳内ポイズンベリー』の影響を受けてしまった見方なのかもしれません。
『脳内ポイズンベリー』では脳内人物が、外骨格である人物のセリフや行動も司っているようでした。
『インサイド・ヘッド』の場合は、脳内人物の権限はそこまで支配的ではなかったような気がします。
なので、ヨロコビさんとカナシミさんの大冒険を、観客であるこちらは知っているけれども、ライリーさん自身はそれを知ることは無く、自分自身がどうして変わったのか自覚することは無いのかもしれません。
けれども、人の成長というのは、得てしてそういうものなのかもしれません。
どうということのない積み重ねの中で、知らない間に変化してきていて、気がついたら昔の自分はどんなだったのか思い出せなくなっている、みたいなものかもしれません。
昔はそれなりにやんちゃしていたはずが、いつからか自覚もないうちに、同級生にも敬語で話すような卑屈な人間になっていたりするのかもしれません。
特別なきっかけなんて必要なくて、ふとした何かの拍子に、コロッと変化してしまうのかもしれません。
メッシュなクラスメートが手をさしのべるような展開になっていたら、それこそ旧来の物語のテンプレートに縛られていることになるのかもしれません。
あくまでもライリーさんが独りで解決してみせたことこそが大事だと見ることもできるかもしれません。
結局、家族をはじめ他人からの期待に応じようと「いい子」を演じることの限界なのでしょう。
このカナシミさんを、子からいかに引き出すかというのは、親なり周囲の大人なりに課せられた大きな課題でしょう。
このあたりは、『きみはいい子』にも通底するテーマなのかもしれません。
『きみはいい子』の尾野真千子さんが、ちょうど、カナシミさんを表に出せないまま成長してしまった姿なのではないかしら。
カナシミさん、大事。
見ているとイライラしますけどね。
自分自身を見せつけられているみたいで。
余談ですが、劇中でのイケメンさんに対する扱いの雑さにはスカッと心が晴れ渡るかのような気持ちです。