幕が上がる 感想

映画「幕が上がる」を観ました。

原作未読。

ももくろさんは、モーレツ宇宙海賊で主題歌を歌ってらした程度の認識でした。



ネタバレ全開です。
ご注意ください。
















高校の演劇部のお話。

ものすごく正統派の、先輩世代はすごかったけど主人公世代はそれほどでもない感じのところから、大きな大会を目指して結束していく方向性な、真っ当な部活動ものだと思います。

キラキラ眩いばかりです。



主人公さんは、友だちの付き添いで入部しただけのはずが、なんとなく部長にさせられて、なんとなく脚本を書かされて、なんとなく演出をさせられていく感じでしょうか。

基本的に主人公さんの視点を中心に、主人公さんを含めた友人3人組と、強豪校から編入してきた転校生と、後輩さん、あたりが主要なメンバーでしょうか。

そこへ、頼りにならない顧問とは別に、新任の謎の教師(黒木華さん)がアドバイザーとして加わる布陣。

手堅いです。

国語の教師の志賀廣太郎もまた、素晴らしくて、まずその落ち着いた声だけでなんだか痺れてしまうのですが、宮沢賢治やら谷川俊太郎さんやらを引用した含蓄のあるお話が、心に響きます。

ああいうお話って、学生の頃はあんまりピンと伝わらなかったりしましたけれども、今となってはもっとちゃんと聞いておけばよかったと思います。

国語の教科書も、あの頃はわかっていませんでしたが、読み返してみるとやっぱりおもしろいんですよね。

良い作品が選ばれていたのだなあと改めて感じますし、あれが読書の原体験みたいなものなのだろうと思います。



演劇部において、役者志望とか脚本家志望とか演出家志望とか大道具小道具衣装みたいな裏方志望とかの配分ってどうしているのかしら。

照明とか音声とか、兼ね役でやっていたのか専業だったのか、人の見分けがついていなくて、よくわかっていませんでした。
衣装っぽいものを着ていた気もしますけれども。

緞帳の上げ下げは部員とは別に、運営側で専用のスタッフがいたっぽい気がします。

ストップウォッチを握りしめて時間経過を管理しているのも、緊張感が伝わってきます。



裏方といえば、大きな大会にボランティアスタッフとして参加してその様子を体験する場面も、見せ方が上手だと感じました。

あれだけ多くの人たちによって運営が支えられていることもわかるし、会場の雰囲気も、目指すべき上位の姿もわかる、主人公たちにも、映画を見ている観客にも伝わってくる描写に感じました。

全国上位の演劇って、なんかすごそうです。
機会があったら見てみたい、くらいには興味を引かれています。



舞台の生っぽさとして、小道具をつかみ損ねて落としてしまったり、舞台装置に蹴つまずいてしまったり、ホイッスルがきれいに鳴らなくてひょんひょろ〜となってしまったりと、個別の事象であれば、まあ生だものしかたないね、と思えたかもしれませんけれども、重なってしまうと、なかなかつらいものです。

やり直しのきかない一発勝負の恐ろしさを感じます。



アドバイザーの先生に関しては、火がついてしまったものはしかたありません。

役者さんという人種は、わがままで自分勝手で唯我独尊なくらいでないと務まらないのかもしれません。


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ここからは話が逸れまして。

この映画の舞台は、どうやら、静岡県富士市のようです。

岳南鉄道(訂正:岳南電車)がこんなにも活躍するなんて。
まるで銀河鉄道みたい、な厚遇ですもの。

製紙工場の煙突だったり、イオンモール(訂正:イオンタウン)だったりと、身近な舞台があちらこちらに。

ぼく自身はここらの出身ではないので学校環境に関してはあまり知らないのですが、
ここらの方々は、初対面の際に、お前どこ中?、とか、あんたどこ高?、とか、出身校の話題から花を咲かせるくらいに地元愛が強い方々が多い印象です。
(それだけに地方出身者はちょっぴり居心地が悪い思いをすることもありますが。)

そんなわけで、ここらの方々がこの映画を見れば、あれはどこそこだとか教えてもらえそうな気がしますけれども、
惜しむらくは、富士市内には映画館自体が失われていること。

まあ、富士宮か沼津まで出ればいいわけですし、清水、静岡でも、横浜、川崎でも、新宿、池袋、渋谷、日本橋でも。
行こうと思えばどこへだって行けるわけですし。

覆水を盆に返すのは、たいへんなのかもしれません。