花とアリス殺人事件 感想

映画「花とアリス殺人事件」を観ました。

花とアリス」未見。

中学生の若さが全開で、眩しいです。

痛々しさも含めて、いわゆる中二的な部分も含めて、若い。
瑞々しい。

女子の人を胴上げなんかしてべたべた触れるなんて、ギリギリ中学生くらいまでなら許される特権なのではないかしら。

ぼく自身はあんな元気なグループの輪には入れなくて、少し脇からぼんやり眺めるしかできない側ですが。

それでいて、通学路で待ち伏せて唐揚げを投げつけたりして逆にボコボコに足蹴にされたりということも、おそらくぼくの人生では起こり得ない気もします。

小学校のときは少しやんちゃしていた記憶もありますが、今となっては、どうやってあんなにいきがっていることができたのか不思議でもあります。

と同時に、こうした中学生らしい生々しさを表現できる創作家の方々の、記憶力なのか観察力なのか想像力なのかわかりませんけれども、そういう感受性というものは、ある程度意識して育まなければ、ただぼんやりと生きているだけでは身につかないのだろうなあ、とも思います。

作中のムツさんみたく、ある程度自覚的に演じることができるくらいならば、いろいろと見えるこまともありそうです。

特訓してNからN+になるために自分と向き合う、というのは、こういうことなのかもしれません。



見えるといえば、アリスさんのスカートの中が(おそらく)見えなかったのは神業的な回避能力だったように思います。
鉄壁のスカート。



ユダさんと4人の嫁さんの噂も、中学生らしいといえば中学生らしい気もしますし、ファンタジーといえばファンタジーのような気もします。

ケッコンしたから苗字を書いちゃうとか、痛々しさ全開で、なんか、うわー、ってなりました。

花さん自身もあんなになってしまいましたけれども、他の嫁さんがどうなったのかも、心配ではあります。

修羅場になりそうなものですけれども。

そんなわけで、事ある毎に婚姻届を押しつけてくる和久井留美さんは中学生であることが判明しました。
Q.E.D.


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ロトスコープ(実写をトレースする手法)ってすごいですね。

惡の華」で使われて話題になってから知った口ですけれども、
線で描いただけのキャラクターがなんだか立体的というか厚みがあるように見えました。

胴体が正面から横向きになっていくときの、幅が変化していく感じとか、捻れる感じとか。

色の塗り方も、今時の、アニメ塗りとか言われるようななんかよくわからない影みたいな感じに輪郭部分を2色に塗り分けた手法ではなくて、基本的にはひとつ面はひとつの色でベタ塗りしたような単純といえば単純な彩色なのですが、
個人的には、こちらのほうが好みかもしれません。

あの影、けっこう意味わかんないんですよね。

今度のドラゴンボールZの映画の予告とかでは、2色どころか3色4色くらいの階層を重ねたみたいな影になっていて、立体感の描写なのかもしれませんけれども、
この作品みたく、線画部分で立体感を表現できていれば、あんな影は不要なのではないかとすら思います。

もちろん、ロトスコープでなく、ゼロから手描きとなると、あそこまでの立体感を表現するのは難しいだろうとは思いますけれども。

平面とか単純な円柱ではなくて、角度によって見える太さが違う感じがしたりとか。

いわゆる「ヌルヌル動く」と表現されるような動きばかりですし。

立っているときのユラユラ揺れる感じとか。



あと、背景動画。

これも、日本アニメ(ーター)見本市同トレスで聞きかじった程度の知識ではありますけれども、たしか荻窪云々なGの回だったと思いますが、
人物と一緒に背景もぐるんぐるん動くのは作画だとかなりたいへんとのことでしたが、(シショーさんはカンタンカンタンとかおっしゃってましたけど)、
この手法だとこんなに背景を動かせるのだなあ、みたいな。

冒頭の、何もない部屋でバレエを踊っていた場面とか、ものすごくぐるんぐるん回っていた気がします。



人体の造形は、そんなわけで、実物に合わせたような実在感ですが、それでいて、顔の表情はアニメーション的というかマンガ的というか記号的な、2次元に親しんでいる人間でも安心できるような、絶妙な表情になっているのも素晴らしいです。

窓から転げ落ちたのを下の人が受け止めるみたいなマンガ的な場面もありましたけれども、引越屋さんの腰が心配になるくらいの現実味を帯びているとでもいいますか。

(ちょうど、青い瞳のキャスバルアルテイシアさんを受け止めた場面と対照的かもしれません。)

現実味がありすぎる肉体描写なだけに、エンジンがかかったままのトラックの下に忍び込むのは、怖い怖いやめてー、という緊張感もありました。

アレはちょっと、フィクション要素が強い部分かと。



フィクション要素といえば、受付にお姉さんが座っているような大きい会社なんて、なかなかお目にかかったことがなかったりします。

アリスさんが引っ越して来たのは田舎みたいな表現でしたけれども、案外、ちょっとした郊外くらいの、すぐに都会へ出ることができるくらいの距離みたいです。

あ、石ノ森とか藤子とか火の鳥とかの地名はなんか少し不思議です。



END マークの後、場内が明るくなってからも少しだけですが追加映像がありますので、せっかちな方は要注意。

というか、ぼく自身も、隣の方が立ってくれなくてどうしたんじゃろ?、とイライラしてしまったわけですが、あの方のおかげさまで追加映像を観ることができたので、感謝です。


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余談ですが、ジブリの教科書の「ぽんぽこ」編を読んでいて、リアリティ描写とフィクション描写の境界が云々みたいなことが脳裏にあるものの、言語化できるほどには自分の中で咀嚼しきれていませんでした。