太秦ライムライト

映画「太秦ライムライト」を観ました。

チャップリンのライムライト未見。

日本の時代劇を支えてきた斬られ役さんのお話。

これはすごい。
かっこいい。
しびれる。
あこがれる。

昔ながらの古くさい「男の美学」的なものを凝縮したかのようです。

年輪を重ねた身体からにじみ出る気迫。

佇まいの鋭さ。

所作の美しさ。

同時に、老いに伴う衰え、悲哀。

ひとつの道に専念して極め上げた人が、いかにして幕を下ろすか。

現代日本を築いてきた世代が前線を退きつつある今このときを、まざまざと映し出しているかのようです。

ひとつの時代の終焉と、次の世代への継承。

とても楽観視できるような現状ではありませんが、そんな課題は次世代に丸投げして、自分たちは最期に一花咲かせることができればいいや、くらいの潔さを感じます。

いや、ご本人はあくまでも謙虚で実直に自分のできることを為すし、引くべき時が来たらおとなしく退こうという姿勢で、その姿こそ美しいわけですが。

人から名指しで必要とされること、その喜び、有り難み。

葬式にどれだけの人が参列してくれるか、みたいな部分にも通じるのかもしれませんけれども、できることならばそれを生前に体感しておきたいということでしょう。

逆説的に、我が身を振り返ったとき、自分がしんでもそんなに悲しむ人はいないだろうと思ってしまうのは、やはりどこか寂しい気がします。

まあ、しゃーない。



古い映画を知らないので近年の作品でしか語れませんが、「アーティスト」における世代交代劇と、構造としては近いように感じました。

老い衰え去りゆく先達と、才気あふれる新進との交流。

男のロマンのひとつです。

あるいは、「紅の豚」。

昔なじみの飲み屋のお姉さんと、才気あふれる新進と。



映像もすごく綺麗で、それもただ綺麗なだけでなくて、なんというかいかにも「映画」という感じを受けるような、ひとつひとつの場面がとても洗練されていたような印象です。

とくにオープニングは、ものすごくわくわく感どきどき感を沸き立たせてくれるようで、圧巻でした。



ちゃんばらというと、どこかわざとらしさとか大げさな感じがあって、そのわりに刀で斬っても血が出ないみたいな、日本刀って刃物というより鈍器なのではないかと錯覚するような思い込みがありましたけれども、
(刃物的な側面を極端に強調すると「地獄でなぜ悪い」みたいなことになるのかもしれませんけれども)、
その虚構の様式美を確立してきた人たちが居た、ということなのかもしれません。

写実的な刃傷沙汰ではなく、あくまでもごっこ遊びの延長線上、みたいな。

あのごっこ遊びの場面も、ぐっときました。

良かった場面を挙げていったらきりがなくて結局映画一本まるごとみたいになりかねないわけですが。



衰退していく時代劇産業の象徴として、若手のアイドルさんらしい人や若手のプロデューサーさんが描かれていましたが、このプロデューサーさんが意外にも有能でした。

こういう有能さの見せ方は、なんか好きです。

一方、ODANOBU!は、なんちゃって信長ものが乱立しているまんが・アニメ方面をも風刺しているかのように見えてしまいましたが、こちらは被害妄想かもしれません。



そんなこんなで、まさしく「しぬこと」に道を見出した人のかっこいい生き様を魅せていただいたのでした。