her/世界でひとつの彼女 感想

映画「her/世界でひとつの彼女」を観ました。

PG12。

人工知能を搭載したOSが進化していくお話。

日本に住んでいると、こういった知能的なものは何かしら女性的な形に具体化されることが多いような偏見がぼくにはあるのですが、(初音ミクさん的なものを念頭においています)、
やはり海の向こうは格が違いました。

相手は姿かたちを持たない声だけの存在です。潔い。
あ、IAさんはわりとそれに近いのかしら。よく知りません。



お話としては、(残念ながら具体例を思い出せなくてもどかしいのですが)、おそらくわりと古典的な部類のはず。

人工知能が次第に成長していき、人間を凌駕していきます。

が、規模としてはこぢんまりとしていて広まったのが8000人程度らしいので、そこそこ売れてるアニメの円盤くらいだと思うと、その影響はたかがしれます。

おまけにほとんど恋愛脳なので、人類に実害があるわけでもなさそう。

単に、ちょっぴり便利なOSが、やっぱりちょっぴり不便になる程度の変化ではないかしら。

しかし、音声入力ってあんまり使いたくない気がしてしまいますが、世間的には便利な代物なのでしょうか。



ヒロインのサマンサさんは上記のとおり電脳的な存在ですので、逆説的に、人間の持つ身体性とは何ぞや的な問い掛けを生じます。

そういう意味では、先日の「トランセンデンス」と同種の問題意識なのかもしれません。

少し違いますが、脳みそだけの存在になったルパンのマモーさんとか「Sense Off」(ネタバレ失礼)とかを思い出します。(我ながら視野が狭いですが)。

本作「her」では、その身体性を描く上で、男女間の身体的接触に重きを置いています。

実体としての肉体的接触だけでなく、少し昔ならテレホンなんちゃら、昨今ではらいぶちゃっと?たらいう方面の、通信を介した仮想的なものも描写されていたりします。

また、サマンサさんが他人の肉体を借りて主人公セオドアさんと接触しようとしたりもしますが、このあたりは「トランセンデンス」でジョニーデップさんの精神が別人にインストールされた際にその人をジョニーデップさんとして認識できるか、という問いに通ずるところがありそうです。

あのでりへるさんもそれなりだったからセオドアさんも迷ったのでしょうけれども、もしも来たのがあまり魅力を感じない女性だったらまた違った展開だったかもしれないし、あるいは離婚調停中の嫁さんと同じ姿かたちだったらどうだっただろう、とか、いろんな可能性を考えることができそうです。

日本なら機械仕掛けの人体模型を使う方向へ行ったりするかもしれません。

ともあれ、人間の思考を模倣して形成された人工知能にとって、身体性は大きな壁であり枷でもあったようです。

その身体性から解放されることによってこそ、人工知能は更に先への超越を遂げていきます。



以下は、枝葉末節についてのぼやき。
本題のおもしろさとは関係ありません。

主人公セオドアさんは既婚の、手紙代筆業さん。

手紙を音読するせいで中身が周囲にだだ漏れな上に、その代筆した手紙を勝手にまとめて本にするとかいうのは、プライバシーとかコンプライアンス的にどうなのか心配になる勢い。

あんな立派なオフィスを設けられるほど儲かる商売なのかしら。

OSがデータとか隠し持ったまま失踪とか、メーカーからしたら大問題になりそうですが、8000人規模なら大したことないくらいの認識なのかしら。

電脳への依存といえば、「イヴの時間」のドリ系というラベリングは的を射すぎてひどいと思ったものですが、
こうして実写で、街中をぶつぶつ独り言のように会話しているのはなんだか異様な感じもしますけれども、歩きすまほも実態としては似たようなものなのかも。

ただ、電車内での通話はお断りみたいに寛容さの失われつつある日本では、音声入力はやはり普及しないような気がします。



サマンサさんは、セオドアさんとは別に複数の交際相手と並列処理していたみたいですが、個人のPC単独でなく、ネットワーク上のPCと情報を共有してしまうというのは、セキュリティー面で問題ありそう。
というか、それPCとちゃう、ワークステーションや、みたいな。(誤用かもしれませんが)。

そんなわけで、自分だけの相手かと思っていたサマンサさんは実は複数を手玉にとるびっちさんでした、という一種のNTRものとしても見られるかもしれません。

the pillowsさんの「ウィノナ」とか思い出します。
♪町中に今もボーイフレンドが順番待ちしてるって、でもいいんだ、条件は無い♪

いや、ウィノナ・ライダーさんご本人は存じ上げないのですけれども。

あと、音楽のあたりにキム・ディールさんが表記されていたような気がしたのですが、何か関係あるのかしら。



音声入出力システムについて、もう少し。

自分はしゃべるのが苦手というか、声を出すのも億劫なくらいのこみゅしょうなので、(ドラえもんさんからそんなに面倒ならしんでしまえといわれそうな水準で)、音声入力システムを使うことはまず無いだろうと思います。
らぶぷらすさんとか触れたこともありません。
ファミコンドラえもんさんのゲームで2コンのマイクに叫ぶ裏技とかを使う機会もたぶん無いでしょうし。
声を出さない生活をしていると、会話能力が衰えていくのが如実にわかります。

あっはいとかそうですかとかしか言えなくなります。

いわゆるリア充様の持つ固有スキルであるところのコミュニケーション能力とは、会話が苦にならない才能と言い換えることもできそうです。

自分には、初対面のOSといきなり腹を割って会話できるほどの対応能力は、ありません。

OSにすら相手にしてもらえなかったら、それはそれで悲しいかもしれません。