「王道」について

「王道」という単語が使われる場合、その指し示す意味を即座に把握できないことがしばしばあります。

ある作品を「王道」と表現する場合、「そのジャンルを形成してきた従来の既存作品を総体した概念のようなものを踏襲している」ことを意味しようとしていると捉えています。

が、その「総体たる概念」が、なかなかわかりにくかったりするのです。

まず新しい分野を開拓する先駆者がいて
、それに続く後進が洗練していき、あるいはパロディとしてネタにされながら、徐々に定型が確立されて周知されていく。

その経緯をすべて網羅している人のほうがおそらく稀で、大抵はその発言者の遍歴によって、あるいは意図によって、「王道」の意味するところが異なるのではないかと思います。

つまり、発言者の背景を知らなければ、文脈を掴みにくいわけです。

それなりに遍歴や文脈を共有している仲間内ならまだしも、世間一般に通じるような絶対的な「王道」というのは、案外、説明が難しいのではないでしょうか。



そんなわけで、以下、自分語りになりますが、自分のロボットもの遍歴から、「王道」を探ってみます。

自覚的にアニメを観るようになったのがけっこう遅かったので、今の自分の大部分を形成しているのは、「エヴァンゲリオン」、「ナデシコ」、「エスカフローネ」あたりです。

とても「王道」と表現できるようなものではなく、ひとひねりもふたひねりもされたような、意欲的で挑戦的な絡め手の作品群ではないかと思うのですが、これらを「王道」と呼ぶことができるような文脈もあり得るでしょう。

ガンダムシリーズでいえば、「V」から入って「G」、「W」、「X」。

初期のものはもっと年を経てから体験しましたので、こちらもいきなり応用編だったのかもしれません。

自覚的になる前の原体験としては、「ワタル」「グランゾート」あたりを好きだった記憶がありますが、覚えているのは漠然とした絵柄や人物配置程度で、お話の流れとかは忘却の彼方です。

ゴルドラン系も観ていたと思いますが、シリーズ毎の差異を認識したりはしていなかったはず。

パトレイバー」もよくわかっていなかった気がします。

その他、戦隊ものだと「ゴーグルファイブ」のカセットテープが実家にありました。

ドラえもんの「鉄人兵団」もロボットものに含まれるでしょうか。



2000年前後は個人的な空白期間で、その後もかなり偏った遍歴になっているのですが、そのあたりは割愛。



そもそも本文で扱う「ロボットもの」という定義が曖昧でしたが、本文では、戦闘兵器的な「戦う力」としてロボットを扱っているもの、くらいの意味合いのつもりです。
ジャンルの括りは難しいです。

そんなわけで、上記作品では、
まず、大まかに「主人公勢力」と「敵性勢力」とが敵対している構図が多いように思いますが、そもそも戦闘兵器を前提としていますので、これは言及するまでもありませんでした。



次に、「敵性勢力」の扱い。

おそらくこの「敵性勢力」に対する思い入れで、その人の「王道」の認識が変わるのではないでしょうか。

つまり、
1.勧善懲悪的に、絶対悪としての敵性勢力を絶対正義の主人公勢力が打ち倒す、という流れをもって「王道」とみなす人もいれば、
2.敵性勢力にも様々な事情があり、それを汲んで一部または全体と和解するような流れを「王道」とする人もいるかもしれないし、
3.すったもんだあっても結局理解し合うことなどできないのだ、みたいなものが「王道」という人もいるかもしれないわけです。

当時は斬新だったものであっても、今となっては「あるある」のひとつになっているわけで、上記3パティーンのいずれも「王道」として表現することができそうです。
あるいはもっと他のパティーンも含めることができるかもしれません。

敵性勢力云々はともかく、最終的には「愛」がすべて解決する、というのもまた、「王道」かもしれません。

「敵性勢力」が人間同士のような同じ種族だろうが、外宇宙生命体みたいな異種族だろうが、そこから生じるドラマは類型化されているのではないかと思います。



今回の2作品の場合、2つの勢力が対立・交戦状態という構図がある上で、現段階では、

一方は、技術力が圧倒的に上回る相手から侵略される方向、

もう一方は、軍事的には均衡もしくはやや劣勢なところへ、超越技術的な力を獲得して押し返そうとする方向、

のように見受けられます。

前者では、敵性勢力側にも主人公格の存在が居るようで、ロミオとジュリエット的な方向になるのかしら、と想像したり、
後者では、主人公がいかに無双していくのかを期待しつつも、最終的にどういう落としどころになるのか心配したりと、
どちらも先が楽しみです。



あ、「主人公」の扱いの視点が抜けていました。

非戦闘員がやむなくロボットに搭乗するパティーン、既に戦闘訓練を受けた操縦士パティーン、操縦士として未熟な者が成長していくパティーン、逆に超越的な能力で圧倒するパティーン、等々。

今回はどちらの主人公も、訓練は受けていても経験は不足しているように見受けられます。

「王道」かどうかわかりませんが、この先の展開は、観てのお楽しみ。



人物を含めた絵柄や画面上の配置等をひっくるめたビジュアル面や、音楽面など、お話以外の要素でも、好みの差は出そうです。

個人的には志村貴子さんの(まんが作品の)ファンです。