街場のマンガ論 感想

内田樹「街場のマンガ論」、小学館文庫

ものすごく大雑把な表題どおりに、漠然とした「まんが」そのものを論じてみたり、個別の作品について言及してみたり、筆者の来歴を語ってみたりと、わりと自由気まま。
元はブログの記事らしく、おまけに元の単行本は数年前のものみたいなので、内容はやや古くて、なんだかずれているような気がします。

日本のまんが文化を支えているのが、表意文字表音文字が両存する日本語である、という仮説には、ふんふむなるほど、と思わされます。

一方で、少年まんがと少女まんがとを、全く異なるリテラシーを要する別物だ、と断じる見方には、やや疑問も。
ただ、我が身を振り返ると「カレカノ」も「ちはやふる」も、少女まんがよりは少年まんがの文脈なのかしら、とも思えます。

少女まんがについてもうひとつ、恋愛界、道場界、家庭界だとかいう段階がどうこうというのも、ふんふむなるほど、と鵜呑みにしていましたが、
カレカノ」ではたしかに恋愛段階を乗り越えてからが本番だった気がしますし、最後は家族の話になっていた気がします。
ちはやふる」はむしろ道場的な勝負事が先行して、後から恋愛要素が付いて来た感じ。

こういう場合、自分が知っている範囲内だけから帰納法的に概略していくのでしょうけれども、どうしたって自力では観測しきれない部分が出てくると思うのです。
その「知らない部分」を無いものとして、既知の要素だけで辻褄を合わせていくことが、文筆屋さんに必要な能力なのだとしたら、ぼくには文筆業はできないな〜、と思います。

井上雄彦さん、宮崎駿さん(まんがでなくアニメについてですが)、エースをねらえ、手塚治虫さん、赤塚不二夫さん、ワンピース、進撃の巨人、と比較的メジャーなものを扱うことで、「まんが」という漠然としたわけのわからないものを概略し得たような気分になることができるので、たまにはそういうものもいいのかもしれません。

街場のマンガ論

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