貴族探偵 感想

麻耶雄嵩貴族探偵」(集英社文庫

やんごとない身分の貴族様が、使用人を駆使して事件を解決する作品集です。
貴族@はたらかない。

以下、ネタバレ注意










1.ウィーンの森の物語

古典的な、糸を使って鍵を部屋の中に残すという密室トリックを用いた倒叙もの。
古典的です。

2.トリッチ・トラッチ・ポルカ

死体の頭部と両腕が切断されていた事件のお話。
大胆なアリバイトリック。

3.こうもり

叙述トリックもの。
1回では理解できませんでした。
犯人というよりも、作者さんが巧妙です。

4.加速度円舞曲

道路に石が落ちてきて、崖の上に行ってみたら人が死んでいた、というお話。
見取り図もの。
被害者の信心深さがトリックの鍵でした。

5.春の声

3人の被害者がそれぞれお互いを殺したのではないか、という循環もの。
その解決はひどいもので、電車の中で思わず声を上げて笑いそうになりました。
いやいや、それはないでしょうよ。
というか、そもそもこの推理が真相だという保証はどこにもないのですよね。
なんとなくですが、真犯人は別にいるような雰囲気もあって、微妙にすわりが悪いです。
作中でほのめかされているように、教唆だけなのかもしれませんけれども。

そんなわけで、推理ものとしては、「こうもり」の見事にしてやられた感が大きいですが、「春の声」のいたたまれなさもまた、この作者さんらしいというか。

ちなみに、各話ごとに、貴族様が口説くマドンナ的存在がいるのですが、個人的には「春の声」の皐月様が好みでしょうか。
某鬼龍院の皐月様ほどはとんがっていないですが。

貴族探偵 (集英社文庫)

貴族探偵 (集英社文庫)