ジブリの教科書2「天空の城ラピュタ」 感想

スタジオジブリ・文春分庫編「ジブリの教科書2 天空の城ラピュタ」、文春ジブリ文庫

あいかわらず雑多というか幅広い内容です。

アフレコレポートやら制作現場のお話やら、作中に登場する機械の解説もあれば、鉱物としての飛行石の解説もあったり、大阪万博と関連付けている人もいたりして。
宮崎駿監督ご本人のインタビューはもちろん、弟さんから見た兄としての宮崎駿さん像というのも新鮮でした。

上橋菜穂子さんは、ファンタジーという観点から議論を展開。
闇の中にまたたく光、みたいな、たくさんの灯が懐かしいのはあのどれかひとつに君がいるから、みたいな感じですかしら。

金原瑞人さんによる「古くからの児童文学と『ラピュタ』の輪郭」では、古典的な児童文学の中に『ラピュタ』の原型を見出します。
イギリスのファンタジーな児童文学と、アメリカのリアリズムの児童文学と、『ラピュタ』はその両方を受け継いでいるとのこと。
その特徴として、主人公が孤児であることが挙げられていますが、この議論の延長線上には、現代日本のらのべみたいな両親不在の物語も連なっているのではないかしら、などと思ったり。
親の庇護の下にいながらにして、親の束縛から自由という設定は、実は物語を駆動するためによく練られたものだということがわかってきたような気がします。

ドーラさん論は皆さん白熱してますが、ムスカさんについては、最後にちらっとパズーのシャドウだ的な言及があった程度でしょうか。

「まんが映画」としてのアニメーションの力と、世界、社会のリアリティとか衝突して、王政が崩壊していく様子は、なるほどです。
王の責任から解放され、働くことを選択して大人になった主人公たちの姿は、働きたくないでござる的な現代において眩いのでした。